「もう二度と関東には戻れず、地方を転々と」…一度歯向かえば”終わり”!? 日本の司法制度を蝕む「最高裁事務総局」中心体制
必ず受ける“事務総局の報復”
こうした人事について恐ろしいのは、前記のような報復や見せしめが、何を根拠として行われるかも、いつ行われるかもわからないということである。たとえば、「違憲判決を書いた場合」などといった形でそれが明示されているのなら、それ以外は安心ということになるかもしれないが、「ともかく事務総局の気に入らない判決」ということなのだから、裁判官たちは、常に、ヒラメのようにそちらの方向ばかりをうかがいながら裁判をすることになる。当然のことながら、結論の適正さや当事者の権利などは二の次になる。 また、事務総局は、裁判官が犯した、事務総局からみての「間違い」であるような裁判、研究、公私にわたる行動については詳細に記録していて、決して忘れない。たとえば、その「間違い」から長い時間が経った後に、地方の所長になっている裁判官に対して、「あなたはもう絶対に関東には戻しません。定年まで地方を回っていなさい。でも、公証人にならしてあげますよ」と引導を渡すなどといった形で、いつか必ず報復する。 このように、事務総局は、気に入らない者については、かなりヒエラルキーの階段を上ってからでも、簡単に切り捨てることができる。 なお、右の例は、単なるたとえではなく、実際にあった一つのケースである。窮鼠が猫を噛まないように、後のポストがちゃんと用意されているところに注目していただきたい。実に用意周到なのである。 『なぜ「出世に目がくらんだ裁判官」ばかりが増えるのか?…腐りきった“最高裁人事”の巧妙な「出世レースのカラクリ」』へ続く 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」「なぜ、日本の政治と制度は、こんなにもひどいままなのか?」「なぜ、日本は、長期の停滞と混迷から抜け出せないのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
瀬木 比呂志(明治大学教授・元裁判官)
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