上沢直之が「古巣復帰」しなかった複雑事情 日本ハムから水面下で送られていたメッセージ
なぜ古巣復帰とならなかったのか。レッドソックス傘下3AウースターからFAとなっていた上沢直之投手(30)のソフトバンク入りが決まった。今オフ、先発強化を最優先としていたホークスの補強ポイントに合致。鷹がNPB通算70勝を誇る実力者を迎え入れ、リーグ連覇に向けて着実に戦力を整えた形だ。米挑戦から1年、志半ばで日本球界復帰を決めた右腕が12年在籍した日本ハムを選択せず、新天地を求めた背景とは――。 【写真】日本ハム時代 大谷翔平と釣りをする上沢 上沢は昨オフ、日本ハムからポスティングシステムを利用してMLB移籍を容認されてレイズとマイナー契約。開幕前にレッドソックスに移籍し、4月末に念願のメジャー初昇格を果たした。中継ぎで2試合に登板するもメジャーの壁は厚く、長いマイナー生活を余儀なくされた。そして9月に右ヒジを痛めて失意の帰国。自身の先発適性を再確認し、日本球界復帰を視野に入れた右腕に対し、国内の複数球団が水面下で動向を調査していた。 ソフトバンク入りはルールからはみ出したわけではない。ただ、NPB復帰ならポスティング移籍を認め、米挑戦を後押ししてくれた日本ハムに戻るのが筋とみる世論が根強かったのも事実だ。「古巣復帰」に至らなかった背景には何があったのか。 シーズン終了を待たず、9月半ばに帰国した上沢はすでに日本球界復帰の意志を持っていた。本人の中で、恩義がある日本ハムは真っ先に浮かんだはずだ。だが、各球団が来季戦力編成の骨格を固める11月までに、球界内では「日本ハムは上沢を構想に入れていない」との声が漏れ伝わっていた。 「1年でNPB復帰を受け入れるのが上沢のためになるのか、という考え。その程度の思いで海を渡ったのか、というメッセージを水面下で送っていた」(球界関係者) 不完全燃焼のまま挑戦を終えていいのか。家族を含めた本人の事情もあるが、日本ハムフロントは「野球人」としての志を説いたとみられる。 上沢なりの考えもあったはずだ。日本ハム関係者が「人格者」と口をそろえるナイスガイ。別の球界関係者は「古巣のメッセージを受け止めつつ、チーム編成の見直しを生じさせるような復帰を控えようという心理が本人の中で働いたとも聞く」とも明かす。高卒入団の生え抜きで確かな戦力。にもかかわらず、積極的なオファーをあえて控えた日本ハムに、球界内からは「ファイターズらしい信念」と称賛の声が止まらなかった。 ソフトバンクは3年以上の大型契約を提示して獲得に至った。内情を把握した上で、市場に出た上沢に猛アタック。「目指せ世界一」をスローガンに掲げるホークスも、独自の信念があって獲得を決めた。 日本ハム以外なら反発必至の国内復帰。複雑な事情が入り交じった末の決着だった。
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