報酬10万円でアパホテル事件に加担した「元高校教師」は、裁判時には記憶が断片的に…なりすまし役の”認知症”まで見越して犯行計画を立てる地面師グループの「黒幕」たち
なりすまし役は認知症!?
しかしなにしろ記憶そのものが途切れ、断片的すぎて脈絡がない。担当弁護士が松本の公判で心神耗弱を理由に無罪を争うことも検討したほどだ。むろん鈴木仙吉の生年月日などを覚え込み、取引に臨んでいるため、無実とは認められない。だが、認知症の症状が出ているのもたしかなようで、本当に記憶がないようにも感じた。それも地面師たちの計算に入っているのだろう。松本には他の犯行グループとの指揮系統やそれぞれの役割など、とうてい証言できない。手配師はそういう高齢者を巣鴨で見付け、なりすましに仕立てていた。 2018年11月8日、主犯格とされてきた宮田康徳の検察側による論告求刑があった。東向島事件で確定している5年半の懲役に加え、検察から新たに8年の服役を求められた。宮田は言った。 「事件のスキームは亀野たちがつくり、亀野が分け前の配分を決めた。彼らには事実を述べてもらいたいが、私のように自供してしまうと、こういう案件は二度とまわってきません」 アパ事件のスキームを組み立てたのは、司法書士の亀野と松元哲(45)というブローカーだった。むろん2人は逮捕されたが、容疑を否認している。そして池袋の女芸能プロダクション社長、秋葉をはじめ、黒幕と目されてきた地面師の多くが起訴を逃れ、娑婆に舞い戻った。 『「警察も信じられない、いっそ署の前でガソリンをかぶってやろうか」…「地面師事件」被害者を絶望させた警察の“奇行”』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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