使いたくなければ、「ノー」と言えばいい…ついに、「Apple Intelligence」で露わになったアップル独自の戦略
「スマホのみ」「PCのみ」との差別化
いずれにしても、他社が現状では「スマホのみ」「PCのみ」を領域としているのに対し、アップルはより幅広い製品にApple Intelligenceを適用させている(ただし、Googleはいずれ、「(自社の生成AI技術である)Gemini搭載のAndroid」をテレビや自動車にも拡大していく方向性にある)。 MacやiPadを使っている人にはiPhoneユーザーが多く、その逆もまた真なりということから、双方で「同じようにAIがはたらく」のはわかりやすく、使い勝手もいいはずだ。 「アップルが他社と異なる」もう1つのポイントとはなにか?
AIを使うメリットとリスク
2つめの相違点は「プライバシー」だ。 オンデバイスAIを使うメリットは、クラウドと切り離すことによって、ユーザーの情報を収集・蓄積しないことにある。 スマホは、いうまでもなくプライバシー情報の塊だ。AIで便利にするために、貴重な個人情報がクラウドに収集・蓄積されていくというのは、正直ぞっとしない。 だからこそ各社は、オンデバイスAIを用いて、クラウドに依存しない処理を目指している。 しかし、Googleやマイクロソフトは、クラウドでのAIサービスも提供しているため、「どこからどこまでがオンデバイスで、どこからがクラウド処理なのか」がわかりづらいという批判もある。 もちろん、実際には使用範囲が公表されているのだが、ユーザーが明示的に拒否しないかぎり、AIを使う際に収集された情報はAIの学習に使われる、という懸念をもつ人もいるだろう。
5年半前に出された「メッセージ」
その点に関して、アップルは明確だ。 同社は以前から、「プライバシー最優先」を繰り返し表明してきている。「iPhoneの中」にある情報は暗号化され、ユーザー以外にはチェックできない仕様になっているのだ。アップル自身ですら、その例外ではない。 次のフレーズは、2019年1月、アップルがラスベガスに掲示した広告である。 「iPhoneの中で起きたことはiPhoneの中にしかない」 この広告は、Googleやアマゾンがクラウドサービスを宣伝しているすぐ近くに掲示された。 こうした手法そのものは、いかにもアメリカらしい比較広告といえるが、およそ5年半前に掲示された「秘匿性のある情報はデバイスの中に留める」というこの方針は以来ずっと守られており、Apple Intelligenceにおいても同様だ。 ただし、話が矛盾するようだが、Apple IntelligenceはオンデバイスAIだけで動くわけではない。 どういうことか。