「宣言」全面解除後の時短要請、法的根拠は? 菅首相と尾身会長が説明
政府は28日、「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」を9月末で全面解除することを決めた。新型コロナウイルスの感染再拡大(リバウンド)への懸念から、飲食店などへの営業時間の短縮要請は続ける方針を示したが、同日夜に行われた菅義偉(よしひで)首相の会見では、宣言と重点措置の解除後の要請について、法的根拠が問われる場面もあった。 【動画】菅首相が会見 「宣言」と「重点措置」全面解除へ
「命令」や「罰則」は適用されない今回の要請
菅首相は、全面解除後の感染防止対策について「ウイルスへの高い警戒は保ちながら、飲食などの制限については段階的に緩和する」と述べた。政府の基本的対処方針によると、コロナ対策について第3者認証を得た飲食店は午後9時まで、そうでない店には午後8時までの時短営業を要請する。酒類の提供も可能とするが、感染状況に応じて知事が提供の可否を判断することとしている。 こうした政府方針に対し、「リバウンドを避けるための段階的緩和なら重点措置に移行すればよかったのではないか」「全面解除した中で時短要請など個人の自由を制限する法的根拠は何か」といった趣旨の質問が記者から出された。 重点措置に移行しなかった理由について、菅首相は「地方自治体と連携しながら、この対応を決めている。まん延防止等重点措置を『どうしても』というところは結果的になかったと報告を受けている」と説明。法的根拠については「いまの法律の中でも要請はできると思っている」と述べるにとどめた。 会見に同席した政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は、特別措置法の24条9項を根拠に知事が各種の要請を行えるとの見解を示した。 特措法24条の9項は「都道府県対策本部長(編注:知事)は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる」と記す。 条文には要請内容への具体的な記載はないが、尾身会長は「知事が地域の実情に合わせてこの法律を使うことが出来て、(重点措置と)同じような対策を打つことができる仕組みになっている」と解説した。 特措法において、緊急事態宣言は時短要請のほか休業要請も可能で、命令や罰則の規定が盛り込まれている。まん延防止等重点措置は休業要請こそできないものの、時短営業への命令や罰則規定がある。それに対し、24条9項に基づく今回の要請には命令や罰則は適用されない。