搾取ビジネスのエビデンスにも罠がある!民泊騒動に見る「あおりの構造」を紐解く
誰だって搾取ビジネスに騙されたくはないですよね。行政書士の服部真和氏は著書『できる社長のお金の守り方 オイシイ話はなぜ稼げないのか』で搾取ビジネスの具体例を取り上げています。一体どんなものがあるのか、本書から紹介します。
たしかに「嘘」はついていないが……
この記事では、搾取ビジネスにハマってしまう理由を明かしていきましょう。この理由を解明できれば、最初からハマりませんし、もしハマりかけても途中で抜け出すことができます。 持ち家や別荘を他者に貸し出して収益を上げる「民泊ビジネス」について取り上げましょう。民泊ビジネスで一儲けしようとあおる側にとっては、報酬やセミナー料を貰えば「利益が確定」して終わりです。 つまり、あおりを信じて物件を買った人が、儲かろうが損しようが関係ありません。ここで考えたいのは「なぜ、その人は民泊ビジネスに期待し、大金を投資してしまったのか?」ということです。新型コロナウイルス感染拡大前後で少し事情が異なりますが、当時よく用いられたあおり文句を列挙します。 ・訪日外国人数が50%近く増加しており、今後も右肩上がり ・宿泊施設が足りず、宿泊ビジネスに機会損失が生じている ・全国に空き家が820万戸もあり、活用が叫ばれている ・賃貸は1か月10万円前後の収入だが、民泊は1日2~3万円以上で収益率が高い ・早くよい立地の物件を購入しないと、有利な物件はどんどん売れていく このように、エビデンスにもとづいた希望ある未来を示されると、大金を投資したくなります。現場をよく知る者からすると、こんなあおり文句はツッコミどころ満載です。しかし、当時はこの手のセミナーや勉強会、チラシ、DM、Webサイトが、実際にあふれかえっていました。あおり文句を真に受けて物件を購入し、民泊を始める人もたくさんいました。 誤解のないように書きますと、この箇条書きの内容はすべて「事実」です。決して嘘ではありません。しかし「事実」を並べたからといって、必ずしも最適解を導けるわけではないのです。セミナーにせよ、チラシやWebサイトにせよ「売ったタイミングで利益が確定する」ビジネス。そんなものは売りたい商材に有利な事実だけを選び、真実を歪めてセールスします。
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