搾取ビジネスのエビデンスにも罠がある!民泊騒動に見る「あおりの構造」を紐解く
民泊がダメならグランピング! それでいいのか?
民泊ビジネスがコロナ禍で急速に下火になったころに、今度はグランピングビジネスが流行りました。経緯としてはこういう流れです。まず、コロナ禍で人混みを避けた外出をする人が増え、リモートワーク(テレワーク)を自宅ですることで、どこでも仕事ができるようになりました。 やがて「ワーケーション」と称して、リゾート地などでリモートワークをする人も出てきます。さらに、アニメ「ゆるキャン△」などをきっかけに火がつき始めていたキャンプブームもあり、グランピングに注目が集まりました。 状況の変化による新たなブームの発生自体はよいのですが、問題はこのような流れに搾取を目的とした輩が集まることです。「状況の変化」があるとオイシイ話に惑わされやすいです。状況の変化時に「お金の不安」が伴うと、なお危険です。 当時も、見事に「民泊ビジネスで負債を抱えた人たち」が、グランピングビジネスで二次被害にあっています。コロナ禍に出た事業再構築補助金という制度などを利用させて、グランピングビジネスをあおるビジネスが大量に出現したのです。 民泊にしろ、グランピングにしろ、本当にそのビジネスが儲かるなら、その人がこっそり手広くこなせばいいだけです。わざわざ他者をあおる必要はありませんよね? いちいちあおってくる時点で、そのビジネスは怪しいと疑っていいでしょう。 そもそも、ブームだったのは「ゆるキャン△(△はテントです)」や「ワーケーション」ですが、グランピングは、わりと大がかりなドームでアウトドアを楽しむものです。つまり「ゆるキャン△層」や「ワーケーション層」とは、規模感が合わないのです。本来のターゲットは、家族連れやコロナ禍で旅行に行けないグループなどになります。 極めつけは、グランピングには法規制的な課題もありました。テントを使うサービスは、あくまで利用者が機材を持参するか、機材をレンタルすることになるので、旅館業の許可が不要です。しかし、グランピングは、これらの持参やレンタルは不可能です。設備として、ドームを設置する必要があります。 建築基準法という建物の規制法では、ドームを置くだけでは「建物」として扱われず、旅館業の許可は取れません。許可を取るには、地面に基礎工事をして固着させる大がかりな工事が必要となります。 商材を売った時点、あるいは報酬を得た時点で利益が確定する輩が、そんな後のことまでフォローを考えているわけがありません。結果、どうなったかというと、違法状態でグランピングを開始した人たちが増加します。当然、あちこちで行政機関による強制撤去が相次ぎました。残念なことにコロナ禍は、こんな二次被害にあう人がとても多かったのです。 服部真和 行政書士
服部 真和
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