「別に負けたっていいよ」パリ五輪金メダリスト角田夏実、“引退を覚悟して臨んだ大会”でコーチが放った一言…「第二の母親くらいの存在」《NumberTV》
華麗な巴投げでパリ五輪の覇者となった柔道家・角田夏実(32歳)には、 20代半ばにして引退を覚悟した苦悩の日々があった。 弊誌制作のドキュメント番組から特別記事を掲載「Sports Graphic Number×Lemino」制作のドキュメンタリー番組NumberTVから特別記事を掲載する。<全2回の後編/前編も公開中> 【初出:Number1109号[挫折地点を語る]角田夏実「自分の柔道を見失っていた」より】 【衝撃写真】「私には巴投げしかない」角田夏実がライバルだった阿部詩を豪快に投げる瞬間、見たことある?「ホールケーキを掲げてニコニコ」嬉しそうなおもしろ写真に、パリ五輪での“巴投げしまくり”金メダルの快挙など写真で見る。
引退を覚悟して臨んだ大会
悩みもがき続ける角田を救ってくれたのが、'15年から二人三脚で歩んできた今井優子コーチだった。1回戦で敗退したら引退しようと覚悟して臨んだ'18年2月のグランドスラム・パリ。大会中にかけられた一言で気持ちが180度切り替わったという。今井コーチは角田にこう告げた。 「結果は関係なく好きなように思い切って挑めばいいんじゃない? 別に負けたっていいよ。自分の人生なんだから、自分が納得できればいいし、楽しいと思うことをした方が良いと思うよ」 最後は3位決定戦で敗れたが、「思い切り自分の柔道をしてぶつかって負けたので、清々しかったです」と気持ちが吹っ切れ、再び前を向くことができたという。 「今度は自分の柔道をどう改良すれば勝てるのかと考えたり、以前のように、練習するのが楽しくなりました」
挫折は自分を成長させてくれる
そんな今井コーチは角田にとって指導者であると同時に、「第二の母親ぐらいの存在」だという。「私の感情をすべて理解して、コントロールできているんだろうなって思いますね」と絶大な信頼を置く。 気持ちが折れたとき、柔道をやりたくないと思ったとき、今井コーチはいつも一番近くで支えてくれた。48kg級への階級変更時も背中を押してくれた。'21年東京五輪への出場が叶わず落ち込んだときも、「後悔のないよう一つずつやってみよう」と引退を翻意させてくれた。 「挫折は自分を成長させてくれるものだと思います。本当に一人では乗り越えられないし、いろんな方の支えがあって乗り越えられたとあらためて実感しています。挫折といっても同じものはなく、一つずつ乗り越えてきたことで前に進めたというか、強くなれた気はします」 挫折は自分を限界まで追い込み、未知の領域へ果敢に挑戦した証。角田もまた、挫折も変化もすべて糧にして、自らの手で未来を切り拓いてきた。 <前編から続く>
(「Number Ex」石井宏美 = 文)
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