福岡市ふるさと納税の返礼品にもなった「遺伝子検査キット」濫用の危うさ
それが民間の遺伝子検査では、鑑定結果は郵送か、インターネット上で確認することがほとんどだ。近年は、ゲノム研究の成果で高血圧や糖尿病などの遺伝要因が数多く明らかになっている。福嶋氏は「遺伝情報をどう解釈するかは、医学の発展で変わる可能性がある。民間の遺伝子検査は、そのアフターケアもない」と指摘する。 ■「言われていることはよくわかっている」 こういった批判に、民間の検査会社はどう答えるのか。 福岡市のふるさと納税返礼品に遺伝子検査キットを提供している「DNA FACTOR」の創業者で、同社取締役の米田真耶人氏は、「子どもの可能性を広げるためのツールとして活用してもらっている」と話す。学会のガイドラインなどで未成年者への検査自粛が求められていることは知っているとしたうえで、同社はこれまで2万2314人に遺伝子検査を実施し、うち8147人が子どもだったという(23年3月時点)。能力に関する遺伝子検査について専門家から「占いのようなもの」と指摘されていることについては「全然否定しないし、言われていることはよくわかっている」(米田氏)と話した。
子どもが対象の遺伝子検査は、同社以外にも化粧品メーカーのDHCなど複数の企業がインターネットで販売している。日本の遺伝子検査は、科学的根拠のあるものと占いレベルのものが一般の人に判別できない混沌とした状態にある。そして、福岡市のふるさと納税サイトには、子ども向け遺伝子キットが今でも掲載されたままだ。
西岡 千史 :ライター