池松壮亮、『海のはじまり』で“静かな葛藤”を体現 津野が水季と築きあげた“絆”
8月26日21時よりフジテレビ系にて放送される『海のはじまり 特別編「恋のおしまい」』は、夏(目黒蓮)と別れた後の水季(古川琴音)と、津野(池松壮亮)の関係を描いたもの。目黒蓮の療養に伴い、急遽放送されることになった回であり、完全新撮のエピソードだ。 【写真】母となった水季(古川琴音)を優しく見つめる津野(池松壮亮) 津野を演じる池松壮亮は、幼少期から子役として活躍し、その才能を着実に伸ばしてきた印象がある。『ラスト サムライ』では当時12歳だったがトム・クルーズを前に堂々たる演技を見せ、菅田将暉との共演作である2016年の映画『セトウツミ』でも静かにツッコむ内海を漫画そのままに体現した。近年は『万引き家族』や『宮本から君へ』、『シン・仮面ライダー』など、数え切れないほど様々な作品で活躍。自然と作品に溶け込み、落ち着いていて、どこか安心感を与えてくれる役者だ。2024年はカンヌ国際映画祭のある視点部門に選出された『ぼくのお日さま』や『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ、』『本心』と公開作も多数控えている。 そんな池松が『海のはじまり』で演じる津野は、第1話から夏に対してどこか冷たい視線を向け続ける、常に感情が入り乱れている難しい役柄だ。水季が働いていた図書館に勤める彼が、水季を気にかけていたことは物語のはじめから明白だったが、話が進むにつれて津野と水季と海(泉谷星奈)の特別な絆が少しずつ描かれてきた。 第6話で夏は、海と一緒に水季と海の思い出の地を巡る。住んでいたアパートや小学校を、水季が存在していたことを確かめるように辿っていくが、海を産んで亡くなるまでどのように生きてきたのか、詳しいことを聞けるのは近くにいた津野しかいない。そして夏は、図書館で津野と対峙し、「つらそうな姿見せずにスッていなくなるのが理想」と話していたという水季の亡くなるまでを純粋に問いかける。 すると津野は約10秒間沈黙し、目いっぱいに涙をため、絞り出すように「思い出したくないです」と答える。第3話で「まだ感情がぐちゃぐちゃ」と言っていた津野にとって、この一連のシーンは、初めて自分の感情を表現できた場だったと言える。「月岡さんより僕の方が悲しい自信があります」と。 第7話では、津野目線で、どのような経緯で水季と海と深い関係になっていったのかが描かれた。水季が図書館にやって来た日、水季の子育ての助けになろうと決めた日、海を保育所に迎えに行った日、水季が中絶しようとしていたことを知った日、それぞれが鮮明にフラッシュバックされていく。 病室で「いつ死ぬかは選べないんですね」と話し続ける水季に対して、津野が「1階に売店あって結構広かったよ」と話題を変えようとするシーンからは、水季が居なくなるという現実を受け入れられていないことがよく分かる。「何がいい? プリン? ゼリー?」と言う津野の声は震えている。水季が亡くなった知らせを受けるシーンでは、過呼吸になりそうなほど息を詰めて、どうしようもないほど泣き続ける。 輝いている水季の記憶しかない夏と、一番辛い時期を支えてきた津野。未だそびえたつ夏との間の壁。それは嫉妬なのか、悔しさなのか、それとも水季を思い出してしまう悲しさからなのか。特にこの2エピソードで捉えられた涙する津野の姿からは、俳優・池松壮亮の静かで力強い、確かな演技力を存分に感じ取ることができた。