スキャンダルの業火のなかから広末涼子がよみがえる 中森明夫
熱心な読書家・広末涼子が愛するチェコの作家ミラン・クンデラの小説『存在の耐えられない軽さ』を想起する。〝永劫(えいごう)回帰〟(ニーチェ)の観念をめぐる冒頭、この世界では同じことが何度も繰り返されるという。宿命のように。広末涼子という〝存在の耐えられない熱さ〟、彼女は熱愛を繰り返し、何度もスキャンダルを反復して生きる。しかし……。スキャンダルの炎に焼かれ、その灰の中から、また新たな輝くアイドルとして甦(よみがえ)るのだ。〝永劫回帰〟のように。 「あたしの中で、いっぱいいっぱい革命があったんだ!」。そう告げた17歳の広末のあのまっすぐな瞳は、きっと今も生きている。私は今でも……いや、この今にこそ、44歳の広末涼子の〝革命〟を信じたいのだ。 ■なかもり・あきお 1960年、三重県生まれ。評論家。作家。アイドルやポップカルチャー論、時代批評を手がける。著書に、『東京トンガリキッズ』『アナーキー・イン・ザ・JP』『午前32時の能年玲奈』『青い秋』『TRY48』など多数。最新作は、自身のアイドル評論人生の集大成たる『推す力』