スキャンダルの業火のなかから広末涼子がよみがえる 中森明夫
モデルや男優と度々、熱愛ショットを写真週刊誌に撮られたが、会見も開かず、コメントも寄せない。まったく「無かった」ことのように振る舞う。清純派キャラを無理矢理に押し通そうとする。そのつど私はあの〝まっすぐな瞳〟を想起した。自身の思い込みを強固に曲げない。いやはや、これは無理がある……。 ◇「広末の耐えられない熱さ」を見よ すべてのマイナスを逆転するように、フランス映画『WASABI』(01年)に主演した。彼女の愛する映画『レオン』の監督リュック・ベッソンがプロデュースで、共演相手はジャン・レノだ。一躍、世界的女優HIROSUEへ。しかし……。フランスから帰国後、開いた記者会見で突如、号泣する等、不可解な言動や奇行が世を騒がせる。あげく〝プッツン女優〟なる称号が冠せられるハメに。 後に彼女が告白している。芸能界が嫌になって、辞めたかった。太ったら辞められるかもと思い、暴飲暴食して、なんと15キロもの激太りを果たしたのだという。 03年、モデルの岡沢高宏と、できちゃった結婚。一児をもうけるも、08年には離婚。2年後、キャンドル・ジュン氏と再婚する。キャンドル氏の先の激白は興味深い。若き広末涼子は芸能界の不条理にぶつかった。なんとかそのプレッシャーをはねのけようとして、優等生すぎる彼女は無理に無理を重ねて「心が壊れてしまった」というのだ。ジュン氏のキャンドル・テラピーによる悪魔払いは、彼女を癒(いや)し、数年間の平穏をもたらした。女優・広末涼子は奇跡的な復活を遂げる。しかし……。 やはり、彼女の内なる情熱の悪魔は死んではいなかった。破天荒な無頼派の表現者のみが持つ、熱い熱い熱いマグマのようなものが内側から噴出して、四十路を迎えて遂に、大爆発したのだ。カリスマシェフとの情熱的な不倫愛が発覚する。夫キャンドル氏と離婚、長らく所属した事務所を退社、仕事と名声のそのすべてを失った。 広末涼子は、どこへ行くのか? ある世代にとって彼女は特別な存在だ。90年代後半、もはやアイドルなんてこの世に存在しない……と思われていたあの頃、忽然(こつぜん)と現れて異様な輝きを見せた。あの時代(ころ)の広末涼子の輝き! 広末を推すということは、あの奇跡の輝きを信じること、信じ続けることなのだ。