中国が「定年引き上げ」を決定、15年かけて段階的に
人口構造の変化が年金制度と経済全般に負荷をかけている状況を受けて、中国政府はついにテコ入れした。法定退職年齢の引き上げを決めたのだ。何年もの間、政府の上層部はこのような問題に注意を払っていなかった。というのも、中国は労働力を多くの若者に頼ることができ、世界で最も低い法定退職年齢を維持することができたからだ。 若い労働者が増えたことで生産力は高まり、公的年金の積立金は膨らんだ。中国の社会には労働者を早く定年退職させる余裕があった。だが、状況は変わった。数十年にわたって一人っ子政策をとった結果、現在の中国は若い労働者が不足している。中国経済はもはや、多くの若者の労働や頭脳を利用することができず、かつての若者が保険金を払った年金の受け取りにも暗雲が垂れ込めている。政府は対応せざるを得なくなった。 その結果、政府は法定退職年齢の引き上げを発表した。従来60歳から年金を受け取ることができていた男性は63歳まで働かなければならなくなる。工場労働者などブルーカラーの女性の定年は現在の50歳から55歳に引き上げられる。ホワイトカラーの女性の場合は現在の55歳から58歳になる。定年を間近に控えた人々にショックを与えないよう、こうした定年引き上げは今後15年間かけて段階的に行われると当局は発表している。 人口構造の変化の傾向から、このような調整が追加で必要になることは間違いないだろう。数十年にわたって一人っ子政策がとられた結果、中国では現役世代1人に対する定年者の数がすでに25年前の2倍になっている。こうした事実上の圧力を受けて、政府は一人っ子の規制を緩和することになったが、この規制の下で中国の人々は子どもを複数持つことに興味を持たなくなった。このため、今後さらに法定退職年齢を引き上げざるを得なくなるなど、状況はより厳しくなる可能性が高い。一人っ子規制の緩和が奏功して出生率が上昇したとしても、その影響が労働人口や年金財政に及ぶには15~20年はかかるだろう。現状では、そのようなポジティブな変化の兆しはない。