中国が「定年引き上げ」を決定、15年かけて段階的に
政府の不注意
政府は不注意にもこうした状況をさらに悪化させた。数年前、政府は中国経済の発展のためには工学部や理学部で学んだ膨大な数の人材が必要と判断した。若者たちにこの分野を専攻するよう促し、そのための資金も提供した。何年もの間、中国では他の国々の合計よりも多くの学生がエンジニアとなって社会に出た。 だが、エンジニアに対する社会のニーズは政府の予想より少ないことが判明した。学校を出たばかりの多くの若者は、自身の教育水準に見合った仕事を見つけることができず、技術などを必要としない職に就くのではなく無職のままだ。前回の調査では、中国の若年層の失業率はほぼ19%だった。つまり、必要な若年労働者数が以前より少ないのに加えて、中国がすでに工場労働者不足に直面しているにもかかわらず、若年層のかなりの数が定年を選んでいるような状態なのだ。 そのため、政府には選択の余地がほぼなかった。男女ともホワイトカラー職の人にはもう3年間、ブルーカラーの仕事に就いている女性にはもう5年長く働いてもらうことで、納税し、経済成長に貢献する若い労働者を十分に確保する時間が稼げる。また、定年の先送りは、すでに働いている人々が従来より長く年金の保険料を納め、年金の受け取り開始は3~5年先になることを意味する。法定退職年齢の引き上げに伴って平均余命が変わる可能性はないため、年金受給期間は従来より3~5年短くなる。 中国の出生率が依然低いことを考えると、法定退職年齢の引き上げは今回が最後ではないだろう。15年かけて引き上げられる予定だが、引き上げが完了する前に、中国政府は再び法定退職年齢を引き上げなければならないだろう。確かに、同様の圧力は日本や欧州、米国でもあるが、中国ほど状況が逼迫している国はない。
Milton Ezrati