なぜ朝倉未来は斎藤裕に敗れ初代RIZINフェザー級王者になれなかったのか…誤算とメイウェザー戦の行方
試合はスタートから波乱を予感させるものになった。朝倉には硬さが見られた。スタンディングの展開から3分過ぎに朝倉の左のインローが斎藤の金的を直撃。2分以上のインターバルが取られる事態になった。緊迫の試合が動いたのは2ラウンドである。 朝倉の左のローを手で受け止めた斎藤が、そのまま足を取りにいきテイクダウンを奪う。朝倉はすぐさま体を入れ替えて立ち上がり、自らコーナーに誘導してディフェンス。ブレイクに逃れた。 実は、左のローキックは、朝倉が公開練習で「自分にも癖が出る。俺は左のローキックから入りやすいので斎藤選手に伝えておいてください」と、自らの癖を暴露していたもの。斎藤は、言われるまでもなく、すでに見抜いていた体だったが、その舌禍が仇になった。 さらに斎藤は、キックから左右のパンチをぶんまわして、組みつくと、また朝倉をコーナーへと押し込む。朝倉はロープをつかんで難を逃れようとしてあがき、審判から「警告」を受けた。 1ラウンドは、ほぼイーブン。2ラウンドは斎藤。ポイントでは、この段階で、朝倉が不利なはずだったが、朝倉陣営のセコンドの2人は、「1,2ラウンドは取っている。3ラウンドを取れば(3-0で)勝ち」と伝えたという。 その計算違いに心理的な誤算が生まれた。 3ラウンドに入ると、朝倉はカウンター狙いのプレッシャーを弱め、ステップバックのディフェンスを多く使うようになる。リスクのない戦いを選択し始めたようにも見えた。 それでも流れを引き戻そうと飛び込んで左ひざをぶちこんだが、斎藤も右ハイキックで応戦した。このまま一進一退の攻防が続くように思われたが、斎藤が朝倉のリズムを読んで仕掛けた。 一瞬の隙をつき、ジャックナイフのように飛び込み、朝倉の膝の後ろに両手を回して鮮やかなテイクダウンを奪ったのだ。そのまま、しっかりと両手でクラッチ。ロープを背に座り込む形で押さえつけられた朝倉は、右のパウンドを必死に側頭部に打ち続けて抵抗したが、上でコントロールする時間を作った斎藤が明確なポイントを獲得した。