専門家も「現場の安全管理はもう限界」自衛隊射撃場での3人死傷事件から1年 今も根強い“地域住民からの信頼”
絞り出すような言葉が、この事件の異例さを物語っていた。 自衛隊での勤務経験がある専門家も、今以上の対策は「現実的ではない」と指摘する。 岐阜女子大学の矢野義昭 特別客員教授: 「安全管理と実践的訓練というのは射撃に限らず、常に伴ってくるジレンマなんですけれども、安全管理を優先しなければならないのはもちろんなんですけど、示された練度といいますけれども、訓練の水準を維持し徐々に上げていくことになると、弾を連射しながら敵に接近をしていくとか、高度の戦闘禍の射撃訓練もやります。弾薬の管理を厳しくするとか、そういうことは聞いていますけど、現場の射場管理という点で言えば、これくらいがもう限界かなというふうに思います」
5月8日、新人隊員の射撃訓練がどう変化したのか、カメラでの取材を陸自第10師団に申し入れたが、19日後の5月27日に返ってきたのは「取材できない」という回答だった。
その後も「再発防止策」の“再現取材”を含め、交渉を続けたが6月13日、最終回答は「遺族感情等を配慮して、取材はお断りします」というものだった。 発砲した男の捜査は送検後、防衛省の組織である「警務隊」が担当。逮捕直後は「銃と弾薬を持ち出したかった」と供述したとしていたが、詳しい動機はいまだ明らかにされていない。
■不祥事で訓練再開は1度中止も根強い地域住民の「信頼」
現場となった日野基本射撃場は、1907年の開設当時は、まだ旧陸軍の管轄だった。陸自が使い始めたのは、1960年からだ。
元々は野ざらしで、山に向かって射撃訓練が行われていたが、周辺の宅地化が進んだことで、2015年には屋内射撃場へと生まれ変わった。
それから9年。無防備な住民のすぐそばで起きた事件。およそ5カ月後の11月6日には、住民への説明を経て射撃訓練が再開されたが、20代の男性隊員が中指を立てるなどした行為が問題視され、訓練は再び中止に。住民からも批判の声が上がっていた。 しかし、銃撃事件から1年を前に改めて周辺を取材したところ、住民が口にしたのは「否定的な言葉」ではなかった。 近所の女性: 「自衛隊というと、国・日本を守っているのイメージがあるので。安心感はありましたけどね」 近所の男性: 「自衛隊は自衛隊で頑張っとるからね」 この地域を「名誉会長」としてまとめる男性も…。 地域の名誉会長: 「やむを得ないと思うけどね。どんだけ完璧にやっとっても、やっぱりそういう人も入ってくるでね。これからそういうことが2度と起きないようにしてもらうだけやね」 自衛隊という組織への「信頼」を感じた。