“買収するだけ”では企業価値は上がらない…経営コンサルが教える〈成果を出すM&A〉の定石【チェックリスト付き】
【ステップ(2)】M&A候補企業の選定
自社の中長期ビジョンとM&Aの目的(どの不足を補うか)を明確にした後、買収候補先の企業を具体化する。まず、候補先の大まかな基準を設定したロングリスト(絞り込む前段階の買収候補先)を作成する。“大まかな基準”とは、事業(取り扱い商材・サービス)、地域、売上規模などで、この時点では買収の実現可能性を考慮せず、対象範囲内に入る企業を広く列挙していく。 作成したロングリストから、事業内容、販売チャネル、地域シェア、製品ブランド力、技術力、株主構成、財務状況などを基準にスクリーニングし、候補先を絞り込んでいく(ショートリストの作成)。その際、マトリクスで分類し、カテゴリーごとに整理することも効果的である。
【ステップ(3)】M&Aの仕掛け(提案)
具体的な候補先を選出した後、買収を仕掛けていく。“仕掛け”と書くと物騒に思われるかもしれないが、敵対的買収というニュアンスではなく、自社と相手先の成長発展を戦略的に提案するという意味合いである。では、どのように買収を提案するのか。これは、相手先の状況によって接触、提案の仕方が異なる。 例えば、後継者が不在で事業存続と従業員の雇用維持などオーナーが安心して引退できることを求める「後継者不在型」、財務状況が芳しくない企業が経営の安定化を図る「企業再生型」、また地域・業界で生き残るための「再編型」や、経営統合や合併によってトップシェアを握れるなど明確なメリットがある「戦略型」が挙げられる。こうした買収候補先の状況に応じて、自社との提携シナジーと相手先のメリットを的確に伝え、提案を行う。 提案方法は、自社による直接的な提案も本気度を示す意味で有効だが、自社の素性を知られずに相手先にアプローチをしたい場合もあるだろう。特に“狭い”業界であればM&Aの動きを察知されやすい傾向がある。水面下で動いていたとしても、「どこどこの企業が同業に声をかけている」という情報が広がることがある。その際は、相手先の取引金融機関や仲介会社、コンサルティング会社など外部の専門家を活用し、ノンネーム(匿名かつ大まかな企業概要)での打診から行うとよい。