「奴隷みたいな仕事は辞めさせろ」 SNSに届く海外からの誹謗中傷…人力車社長が明かす需要爆増の“功罪”
求められる発信力の強化 「もっともっとみんなで浅草の町全体の発信力を高めていかなければ」
従業員にとって、海外客への接客はプラスの面ばかりだ。同社は海外研修などを整備しているが、「やっぱり生の英会話から学ぶことは多いです。従業員が一生懸命英語で説明していると、『これはこういう言い回しだよ』といろいろ教えてくれるんです。従業員によっては他の語学を習って、成果につなげています。それに、海外の方は、とにかく知りたがります。『ここにこの寺や神社がある歴史的背景はなんなのか』『なぜこの場所にこのシンボルがあるのか』。深いところをどんどん質問してきます。そうなると、こちらはたくさん勉強しないといけないですよね」。スキルアップに結び付いているという。 同社が重きを置いているのが、口コミだ。「いわゆるGoogleレビュー。これは大きいです。例えば、海外客様が2ショットを希望して一緒に撮ります。その方が満足していただければGoogleに感想、そして、俥夫の名前を書き込んでくれるんです。それが回りに回って、『君に会いに来たよ』と別の海外客様からご指名をいただくんです。過去に何人もその事例があります。だからスタッフには『自分のファンを世界中に作るんだぞ。そうすれば、もし人力車を辞めた後も必ず応援してくれるから』と、人脈を大事にするよう伝えています」。 外国人客は、情報収集に積極的にSNSも活用しており、浅草には外国人だけが行列をなしているもんじゃ、とんかつ、そばといった飲食店がいくつもあるという。こんなところがあったんだ、と日本人が驚くような場所がインバウンド客の人気スポットになっている現象が起きている。 課題の多い観光施策。西尾社長は、浅草全体の訴求力のさらなる強化を訴える。「そういった店やスポットは、うまくSNS戦略をやっていると思います。最近思うことがあるのですが、浅草寺・雷門・仲見世通り、この定番コースだけで浅草観光が終わってしまうケースを多々見受けます。本当にもったいないですよ。浅草を訪れる全体の観光客の滞在時間が『4時間から2.5時間に減った』とする統計があります。浅草では着物レンタルサービスが大人気で、海外の方がよく利用されていますが、その着物レンタルを含めて、お土産店などはほとんど午後6時でシャッターを下ろします。夜の暗い浅草の街をうろうろする外国人旅行客をしょっちゅう見かけます。皆さんはお土産がめちゃくちゃ充実した、夜も光り輝くドン・キホーテにお買い物に行っています。浅草のブランド力は絶大ですが、そこにあぐらをかくことなく、もっともっとみんなで浅草の町全体の発信力を高めていかなければならないと思います」と力を込めた。
吉原知也