「ユマの演技は正統派」振付師がプログラムに込めた願い…鍵山優真のスケートはなぜ特別なのか? GPファイナルで証明した“マリニンとの距離”
「ユマの演技は正統派」
彼女がこれまで手塩にかけて育てた選手たち、元世界チャンピオンのパトリック・チャンや、現在鍵山のコーチを務めるカロリナ・コストナーはスケーティングがうまい手本として未だによく名前があがるが、それは偶然ではない。ニコルにとって、スケートにおける芸術性とは必ずブレードを通して氷の上から伝わってくるものでなくてはならないのだ。 残念ながらこの日の鍵山のSPは冒頭のサルコウで転倒があり、コンポーネンツの得点も8点台後半におさえられた。ノーミスで滑り切っていたなら、少なくともスケーティングスキルは9点台半ばは出ていただろう。 「ユマの演技は正統派であり、同時にとても複雑です。でも日本には伝統的に、繊細な動きでニュアンスを伝える文化があるでしょう」日本の庭園や焼き物などにも造詣の深いニコルは、そう説明する。
昇る太陽のようなフラメンコ
翌日に演じられた鍵山のフリーはやはりクラシックギターの音色で始まるが、フラメンコという、よりわかりやすいスパイスが加わった。中盤の「ロマンザ」はニコルの愛弟子だったミシェル・クワンが初めて世界タイトルを手にした年のSPに使った曲でもある。ゆったりとしたメロディで鍵山の伸びやかなスケーティングを存分に見せつけた後、後半のフラメンコのステップシークエンスの盛り上がりは圧巻だった。レベルの取りこぼしはあったものの、ジャッジ全員がGOEでプラス4から5の最高レベルの評価をつけている。 「フリープログラムは、彼の中に燃え上がる準備のできている炎が存在していることを感じて作りました。地平線から炎のように昇って来る太陽が、温かさと生命をもたらす凄さについて説明したのです」
マリニンも追い越せない相手ではない
宇野昌磨が競技引退した現在、鍵山は世界チャンピオンのイリヤ・マリニンを追いかけている。世界最高スコア保持者であるマリニンとの点差を少しでも縮めるために、鍵山が持っている長所を最大限に伸ばしていくことは必須である。 この日のフリーで、イリヤ・マリニンは6種類全ての4回転に挑戦するという、世界初の偉業を成し遂げた。だが回転不足などもあり、驚いたことにフリーは鍵山が1位だった。技術点はマリニンが上だったが、鍵山のコンポーネンツがその点差を上回ったのである。総合ではマリニンが292.12、鍵山が281.78。鍵山自身、SPでもフリーでもジャンプミスがあったのでまだまだスコアの伸びしろはある。「クワッド・ゴッド」は鍵山にとって、決して追い越せない相手ではないことが証明されたと言えるだろう。 大阪の門真市でいよいよ全日本選手権が開催される。初タイトルを狙う鍵山だが、名振付師ローリー・ニコルがプログラムに秘めた思いを存分に表現してもらいたい。
(「フィギュアスケート、氷上の華」田村明子 = 文)
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