不妊治療に来る人の9割は、若い頃にダイエットをしていた人!?【柴田博×和田秀樹③】
元気な高齢者は栄養がいい
和田 僕は高齢者を診ていますが、元気な人は栄養状態がいい人なんですよ。 柴田 そうですね。 和田 長生きするなら元気でいたいですよね。柴田先生がまさにそうですが、頭が冴えているから仕事もバリバリできるし、何をしても面白い。 柴田 やはり活力の基は栄養ですよ。 和田 森鴎外の時に反省すればよかったのに、日本の医学界は逆に意固地になり、いわゆる”栄養学”を軽視しました。ビタミンB1の歴史を見ても、鈴木梅太郎が見つけた抗脚気因子を医学会は長い間認めなかった。 柴田 医者は治療だけをすればいいと思ってますからね。 和田 国民皆保険になって、どんな病気をしても薬は出す、検査データを見て異常値を正す、ということにはなったけど、本当は病気になる前に、患者さんを元気にしなきゃ。コロナの時なんてひどいもんですよ。高齢者を家に閉じ籠もらせ、弱らせてしまった。 柴田 そうそう。 和田 運動しないし、動かないと食べなくなるから、フレイルみたいな高齢者がすごく増えてしまいました。 柴田 「人と会うな」とは言うけど、大事なことを言わない。 和田 「ちゃんと栄養を摂ってくださいね」とか「外に出られないなら、せめて家の中では運動してくださいね」と、誰も言いませんでした。高齢者は注意して、と言う割には、高齢者を全然見ていない。 柴田 全く見てない。年を取ると健診も受けなくなるんだけど、そもそもデータがあっても無視ですよ。2001年に「コレステロール値を一定以下にすると死亡率が上がる」というデータが雑誌に出たことがありました。「総コレステロール220㎎以上でシンバスタチンという低下薬を投与された5241人を6年間追跡した」という極めて重要な調査です。『日経メディカル』というメジャーな健康雑誌に載ったのに、誰もこれを引用しない。みんな無視ですからね。 和田 人命より利益優先。 柴田 コマーシャリズムですよ。警戒しないといけませんね。 ※第4回に続く 柴田博/Hiroshi Shibata 医学博士。1937年北海道生まれ。北海道大学医学部卒業。桜美林大学名誉教授。東京都健康長寿医療センター研究所名誉所員。老年学についての研究と教育を一貫して続けている。著書に『長寿の噓』『なにをどれだけ食べたらよいか。』など著書多数。 和田秀樹/Hideki Wada 精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て現職。30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。
TEXT=山城稔