日本でアクティビスト投資ブーム、エリオットの成功に続け
この変化は、日本における株主の役割も再定義した。歴史的に、企業は借り入れに大きく依存しており、企業に対し最大の影響力を持つのは株主よりもむしろ銀行だった。日本では、アクティビストは「物言う株主」と呼ばれることが多い。株主は黙って経営陣を支持するものだという一般的な認識に反するという意味合いが強い。
最も成功したアクティビストの1社であるエリオットは、物言わぬ株主ではない。ポール・シンガー氏が設立したこの米ヘッジファンド会社は、デフォルト(債務不履行)に陥ったアルゼンチン政府と15年間闘い名をはせた。同ファンドは少なくとも17年から日本に投資しており、着実に大企業のポジションを増やしてきた。多くのアクティビストが保有比率を高めやすい中小企業を狙うのに対し、エリオットは今年、日本の優良企業3社の株式で大きなポジションを取った。三井不動産、住友商事、ソフトバンクグループだ。エリオットは自社株買いや資産売却を要求してきた。
エリオットがソフトバンクG株大量取得、2.3兆円の自社株買い求める
国内最大級の不動産会社である三井不動産はエリオットが株式を取得した後すぐに、400億円の自社株買いを実施し、持ち合い株を解消し株主還元を増やすことを約束し、エリオットに10%のリターンをもたらした。
アクティビストも認めた三井不の新経営方針、資本効率化期待で株反発
大和総研の鈴木裕主席研究員は 「三井不動産の事例は現時点では珍しいが、アクティビズムの成功体験となったところから、これから類似事例がどんどん出てくるようになるだろう」と述べた。
しかし、プラスの投資リターンは確実ではない。一部のファンドは好パフォーマンスを謳歌(おうか)しているが、今年アクティビスト投資を開始した約49の戦略が損失を抱えている。
例えば、昨年のパリサー・キャピタルによる京成電鉄への投資のケースだ。ロンドンを拠点とするこのヘッジファンドの創設者、ジェームズ・スミス氏は20年以上日本に投資しており、現在は京成に対し、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドの株式21%の一部を売却するよう提言している。今のところ、同社は保有株を減らしただけで、ファンドの投資は5.1%のマイナスになっている。スミス氏はそれでも、ファンドが公に変化を求めた後も京成電鉄の経営陣がファンドと関わりを持ち続けたことに勇気付けられている。単なる批判ではなく、より繊細なアプローチをとったからだと考えている。