「驚愕の上がり32秒5」武豊の“神騎乗”が生んだドウデュース“究極の末脚”…「偶然を必然にした」天才の手腕とは? 衝撃の天皇賞・秋のウラ側
「上がり32秒5」武豊は究極の末脚をどう引き出したのか
勝ちタイムは1分57秒3。レース全体の上がり3ハロンは33秒7。全体がそれだけ速かったなか、ドウデュースは、メンバー最速かつレース史上最速の32秒5という異次元の末脚を使い、2着のタスティエーラに1馬身1/4差をつけた。 「倍速で走っている感じだった(笑)。強い馬が前を走っていたので、簡単なレースにはならないと思っていたんですけど、ものすごい勢いだったので大丈夫だと思いました」 メンバー中2番目に速い上がりは、4着ジャスティンパレスと10着ニシノレヴナントの33秒0。その次が8着レーベンスティールの33秒2。2着タスティエーラは33秒4、3着に逃げ粘ったホウオウビスケッツは34秒0と、他の馬たちもしっかりと伸びていた。 みんなが最後に速い脚を使うのだから、道中は少しでも前につける――というのが普通の戦術だが、武は、みんなが速い脚を使うのだったら、自分はもっと速い脚を使う、という戦術を選んだ。そのために、ペースがどうあれ、騎乗馬のリズムを最優先にして後方で脚を溜め、さらに、追い出すタイミングをギリギリまで遅らせ、最後の最後にエネルギーを爆発させた。 もし負けたら、あれが「敗因」だったとされかねない位置取りを「勝因」にすることができたのは、彼がコメントしているように、腹を括ったからだ。 ハイペースのなかで瞬発力のある馬が勝ったのなら「ハマった」ということになるのだが、これは、スローの瞬発力勝負のなかで究極の切れ味を引き出した武が「ハメた」結果の勝利だった。偶然でしか見られないような超大外一気の競馬を、必然のものとしたのである。
神騎乗で晴らした無念「やっとこの馬の力を…」
武にとって天皇賞・秋の勝利は2017年のキタサンブラック以来7年ぶりで、保田隆芳元騎手に並ぶ最多タイの7勝目。 昨年の天皇賞・秋は、レース当日、他馬に蹴られて乗り替わった。そして今春は、ドバイターフ5着、宝塚記念6着と不本意なレースがつづいた。その悔しさを、他の誰にもできない「神騎乗」で晴らした。 「ドウデュースと勝てたことが本当に嬉しい。今日はやっとこの馬の力を出すことができて、あらためて強い馬だと思いました。いいラストシーズンにしたいと思います」 ドウデュースの次走は、順調ならジャパンカップ。その次は有馬記念。今年限りで現役を引退する。 おそらく史上最速と思われる「究極のピッチ走法」を、最後の2戦で名手がどのように引き出すか。見どころタップリの秋競馬はつづく。
(「沸騰! 日本サラブ列島」島田明宏 = 文)
【関連記事】
- 【衝撃写真】「驚愕の上がり32秒5」ドウデュースと武豊「まるで倍速」“究極の末脚”の連続写真がカッコいい…「おめめクリクリ」パドックの様子や元気すぎるレース後の姿も一気に見る(全36枚)
- 【あわせて読みたい】武豊55歳はなぜ“衰えない”のか?「馬群からスタンド前の会話を視認」実際にあった超人エピソード…米調教師も驚愕「正確すぎる体内時計」
- 【27年目の告白】天皇賞を制したオフサイドトラップの裏で…柴田善臣が明かすサイレンンススズカのこと「スズカがレースを中止しようする姿が…」
- 【消えた天才】武豊が惚れ込んだ“消えた天才”…あの超良血馬はなぜ勝てなくなったのか?「エアグルーヴにそっくりな弟」が地方競馬で迎えた“悲しい結末”
- 【名作】武豊に聞く。ディープインパクトは サイレンススズカを差せるのか。