横浜DeNAロペスの51年ぶり連続無失策記録を支えた2つの極意
横浜DeNAのホセ・ロペス内野手(35)が16日、横浜スタジアムでの中日戦で一塁手として11度(この試合では12度)の守備機会で無失策を貫き「1517」(1518まで伸びる)の連続守備機会無失策の日本記録を更新した。これは一塁手としての日本記録で1967年から68年にかけて榎本喜八氏が記録した1516を51年ぶりに更新した。ロペスは2017年8月31日の中日戦でのエラーを最後に無失策を続け、昨年は946回の守備機会でノーエラーを守りシーズン守備率10割の偉業を成し遂げている。 実は、試合前、ロペスは、この日達成できることを知らなかった。 4月5日の巨人戦で「1225 」のセ・リーグ記録を更新した際に「あと300くらいで日本記録だと知った」というが、その日が近づいてきても「意識をしなかった」という。 「もし記録のことを知っていたらプレッシャーとなってエラーになっていた」 それも本音だろう。 タイ記録は、7回にショートの大和からのスローイングキャッチ。新記録は7回二死からロメロの二ゴロを前進してさばいた中井からの送球を処理したものだった。ロペスが軽快に走ってベンチに戻ると場内にアナウンスされ、記念のパネルと花束が贈られた。ロペスはそれを掲げ、チームメイトに拍手と握手で祝福されたが、その捕球の瞬間は、偉大なる記録だったと気づいていた人は少なかったのかもしれない。 マリナーズ時代は二塁手だったが、2013年に巨人に移籍して一塁に定着、その年に一度目のゴールデングラブ賞を受賞、2015年に横浜DeNAに移籍してからも2016年から3年連続同賞を受賞している。今や球界を代表する守備の名手だ。 ロペス曰く、2つの極意があるという。
ひとつは準備。 「キャンプからゴロをしっかりと受けて、試合前にも必ずゴロ捕球をやる。とにかく足を動かすこと。どんな打球にも対応することが大事なんだ」 現代野球では一塁手の守備の仕事は増えており、「守れない人が守る」という時代ではなくなっている。ロペスには南米出身者特有の手首の柔らかさがあり、たとえ野手の送球が乱れても、うまくボールを吸収するようにさばくことのできる器用さがある。それも本人が語るように、常に基本の守備練習を反復している成果だろう。 「特別はことはしなくていい。日々ルーティンに取り組むことが大事なんだ」 2つ目は、ファーストミットである。 年季の入ったロペスのファーストミットには、「G」のマークが入っている。実は、2013年にメジャーから移籍した巨人時代に古城茂幸(現在、巨人2軍の打撃守備コーチ)から譲ってもらったもの。当初、本格的に取り組むファーストで、ファーストミットに馴染めずに苦労していたが、古城のファーストミットを借りると、しっくりきて問題が解決した。以来、毎年オフに修理、補強を重ねながら今でも同じミットを使用している。もう6年目だ。 「もちろん今日使ったのも古城さんにもらったミットだ。彼には本当に感謝している。ゴールデングラブを4度も取れたのも彼のおかげ。いつか直接会ってお礼を言いたい」 古城にファーストミットをもらった際、お礼に腕時計を贈った。今でも、古城は、その時計をしてくれているという。国境を超えた友情がロペスの鉄壁の守備を支えている。 「リラックスしてプレーしてさらに記録を更新していきたいね。まあいつかエラーすると思うけどね」 ロペスは、そう言って笑うが、次なる目標には、巨人の阿部慎之助が捕手として2010年4月4日から2011年9月29日にかけて作った全ポジションを通じての最多連続守備機会無失策記録「1709」の更新がある。うまくいけば来月には達成できるだろう。 だが、ロペスが気になるのは記録のことより最下位に甘んじているチーム状況。 「本当はゲームに勝てて、この記録が出ればもっと嬉しかったんだけど。そこが残念」 それが第一声だった。 この日は、2点を追う9回に一死一塁から右中間を破るツーベースヒットを放ち、二、三塁にして中日の“守護神”鈴木を慌てさせ、その後、1点を返したが、2-3で敗れ借金は再び「11」となった。 「この状況をなんとか抜け出せるようにチームに貢献したいんだ。僕自身の状況も良くなっていると思う。いい当たりが正面を突いたしね。後は自信を持つことだ」 最下位脱出へ。ロペスは、鉄壁の守備だけでなく、クリーンナップを任されている一人としてバットの方でもチームを引っ張っていくという熱い決意を表明した。