長崎の「試合がない日も1万人が訪れる」「日本初尽くし」サッカースタジアムがすごかった。実際に行って解説~ジャパネット渾身のサッカー場だけじゃない“街”~
この席からは監督が出す指示、選手の息遣いやアイコンタクト、飛び散る汗まで……聞こえたり、見えたりする観戦の臨場感が、他とまったく違うという。また、入場料がお手頃な2階席、3階席の後部からもピッチ全体を見渡せるようになっており、大体どの席から見ても、眺めは壮観だ。 ■アクセスも大幅に改善 入場してから座席へたどり着くまでのコンコースも、子供を連れた家族が手を繋いで歩ける程度には広い。 また座席に持ち込むスタジアムグルメも、フードコートや敷地内のスーパーなど、十分すぎるほど選択肢が豊富だ。
何よりこの場所は「新幹線駅から800m+路面電車・バスが目の前に1日1500本以上停車」という絶好の立地にあり、これまでの本拠地「トランスコスモススタジアム長崎」(島原鉄道・本諫早駅 徒歩16分)と比べると、抜群にアクセスが良い。 ピーススタジアムが完成した今、残された最大の課題は「V・ファーレン長崎」の「J1昇格」だろう。 2024年のリーグ戦はJ2(J1の下部リーグ)20チーム中、2チームが自動的にJ1に昇格できるところを、惜しくも3位で終えた(6月頃には首位だったのに! )。その後3~6位チームのトーナメント制で残り1枠の昇格を競うプレーオフで敗れたため、今年も昇格は叶わなかった。
JリーグはJ1とJ2でスポンサー収入や入場料収入などがまったく違ってくるため、まず昇格を目指さなければいけない。2023年のV・ファーレン長崎と、J1平均の経営情報を比較してみても、収益性の違いは顕著だ。 V・ファーレン長崎 年間売上 21.1億円 うち入場料収入 1.8億円 スポンサー収入 12.4億円 J1・20クラブ平均 年間売上 52億円 うち入場料収入 9.6億円 スポンサー収入 22.2億円
※日本プロサッカーリーグ経営基盤本部資料より チームのオーナー企業「ジャパネットホールディングス」髙田旭人社長も最大の目標として「J1昇格」を掲げ、既に「過去一番の強化を行う」「来年ぶっちぎることが楽しみ」と宣言している。下平隆宏監督率いるV・ファーレン長崎が、2025年に「ぶっちぎりJ1昇格」を果たせるか、注目したい。 ■1000億円はペイできる? それにしても、人口約40万人の地方都市・長崎市に、なぜここまで巨大な複合都市を作ったのだろうか?
さまざまな疑問をぶつけるべく、後編『「1000億円投資」ジャパネットが握る長崎の“命運” 異例の「民設民営」スタジアムに見る“究極の地元愛”』では、長崎スタジアムシティの運営を担う株式会社リージョナルクリエーション長崎の岩下英樹社長に話を聞いた。
宮武 和多哉 :ライター