劇壇ガルバ『ミネムラさん』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】
チラシとは観客が最初に目にする、その舞台への招待状のようなもの。小劇場から宝塚、2.5次元まで、幅広く演劇を見続けてきたフリーアナウンサーの中井美穂さんが気になるチラシを選び、それを生み出したアーティストやクリエイターへのインタビューを通じて、チラシと演劇との関係性を探ります。(ぴあアプリ・Web「中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界」より転載) 【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】劇壇ガルバ『ミネムラさん』取材より 俳優の山崎一さんが主宰する劇壇ガルバの新作は、峯村リエさん主演、その名も『ミネムラさん』。チラシでは貴婦人風、現代風、そして顔に鮮やかなペインティングをほどこされた青髪の女性と、衣裳とメイクの違う3人の峯村さんが組み合わさっていて、目を惹きます。制作および宣伝美術の陣内昭子さん、撮影の加藤孝さん、ヘアメイクの山口晃さん、衣裳の竹内陽子さんにお話を聞きました。 中井 峯村リエさんが主演で、タイトルが『ミネムラさん』。この興味深い企画自体はいったいどこから? 陣内 峯村さんはずいぶん前から「劇壇ガルバに出たい」と言ってくださっていて、以前の公演では物販のお手伝いをしてくださったりもしていたんです。ですから私たちも「いつか峯村さんと」と思っていた。その長年の思いが満を持して今回実現した形です。 中井 『ミネムラさん』のタイトルは途中で変わったと聞きました。 陣内 そうです。最初は『ある女』というタイトルで進んでいました。けれど、「『ある女』ではちょっとぼんやりしているから『ミネムラさん』にしよう」と、主宰の山崎が。 中井 この上なくストレートなはずなのに、謎が多いタイトルですね(笑)。 陣内 峯村さん自身、周りから「自伝的作品なの?」と聞かれるらしくて、先日「もっと考えてOKを出せばよかった」とおっしゃっていました(笑)。 中井 このインパクト抜群のチラシ作りは、いつ頃から始動しましたか? 陣内 たしか、2月にはラフを描いていましたね。だから公演の7か月前。けっこう早かったかもしれません。 中井 峯村さんのお顔が3つ重なるようなこのチラシデザインはどこから発想を? 陣内 今作では3人の劇作家がそれぞれのリエさんを描くということだけは決まっていたので、いろんな女性像をひとつにまとめてみたいと。ひとりは現代風の女性、もうひとりはクラシカルな貴婦人、そしてピカソの「泣く女」モチーフの女性。この「泣く女」をメイクで表現したいと思って、山口さんにお願いしました。 中井 陣内さんと山口さんとはどこで出会われたのですか? 陣内 この連載でも取材されているデザイナーの成田久くん(第37回はえぎわ『ベンバー・ノー その意味は?』に登場)が共通の知り合いで。私から「演劇のお仕事に興味ありませんか?」と山口さんをナンパしました。 山口 資生堂SABFAというメイクアカデミーに通っていた頃、特別講師で成田久さんがいらしていました。久さんにとてもシンパシーを感じ、仲良くさせて頂いていたところ、その繋がりで陣内さんとお会いして、初めて演劇のお仕事をさせて頂くことになりました。(劇壇ガルバ第4回公演『錆色の木馬』公式パンフレット、ヘアメイク) 陣内 (劇壇ガルバ第4回公演の)『錆色の木馬』のパンフレットで初めてご一緒して、今回もお願いしました。このチラシの撮影は別の芝居の稽古前、数時間で行わなければいけなかったんです。3パターンあって、ひとつはものすごいメイク。だから山口さんは、経営されているサロンのスタッフさんを練習台にして、練習を重ねてくださって。 中井 メイクはぶっつけ本番ですか? 山口 事前にフィッティングで峯村さんにお会いしてウィッグだけは合わせたんですが、メイクは当日ですね。 中井 すごい。時間も限られている中で、このメイクを完成させたわけですね。 山口 CGじゃないの? と驚かれることもあります(笑)。