劇壇ガルバ『ミネムラさん』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】
作品に長く携わる制作がチラシをつくる良さ
中井 このチラシ、裏面がすごく親切ですよね。字が大きくて、デザインがシンプル。 陣内 私が老眼だから、ちゃんと読めるサイズで入れようと(笑)。 中井 メガネをかけずにスタッフ全員のクレジットが読めるチラシは貴重です! 紙に対するこだわりはなにかありますか? 陣内 最初はツヤのある光沢紙で試してみましたが、光沢紙は金額による差が大きいんです。高い紙だとよく見えるけれど、安い紙だとあまりよくない。その点、上質紙は安価な紙であってもある程度のレベルが担保できる。そんなわけで今回は上質紙に刷りました。けっこういい質感が出たのではないかと思います。 中井 こうして皆さんのお話を聞いていると、このチラシはプロが集結してできた仕事という感じがしますね。制作として初期の段階から作品に深く関わっている陣内さんがチラシを手掛けるのは、作品にとってかなり大きなことのように思います。 陣内 最初に企画書を書いたのが昨年11月ですから。プロジェクトとして、作品について長く考えられるというメリットはありますね。 中井 私はチラシが好きなので、なくならないといいなという思いでこの連載を続けていますが、みなさんはチラシについてどうお考えですか? 加藤 印刷するところは減っても、ビジュアルは必要でしょう。でも、手元に残らないのは残念だなあと思いますね。 陣内 コロナ後、折り込みチラシがだいぶ復活してきたんじゃないかと、少し希望を持っています。 中井 今回の『ミネムラさん』は、美術展で配布されても面白そうですよね。美術展のチラシかと思ったら演劇、という。美術展のチラシも凝ったものが多いですから。そうやって、お互いのチラシがジャンルを侵食していったらすごく楽しいな、と思います。 取材・文:釣木文恵 <公演情報> 劇壇ガルバ『ミネムラさん』 作:笠木泉 / 細川洋平 / 山崎元晴 演出:西本由香(文学座) 出演:峯村リエ / 大石継太 / 上村聡 / 森谷ふみ / 笠木泉 / 山崎一 日程:2024年9月13日(金)~9月23日(月・休) 会場:東京・新宿シアタートップス <プロフィール> 加藤孝(かとう・たかし) 神奈川県出身。写真家。日本大学芸術学部写真学科木村恵一ゼミ卒。株式会社新美容出版写真部勤務を経て1982年よりフリーに。映画監督や音楽家など世界的クリエイターのポートレイトを中心に、演劇・広告・雑誌で活動。シス・カンパニー、歌舞伎座、松竹、東京ヴォードヴィルショー等の演劇のポスター・パンフレットにも多く携わる。2007年・2009年に読売演劇広告賞優秀賞受賞。2017年に読売演劇広告賞最優秀賞を受賞。 山口晃(やまぐち・あきら) 埼玉県出身。「Hair make & Spa Tento-」代表・美容師・ヘアメイクアーティスト。日本美容専門学校卒。資生堂SABFA卒。埼玉県、東京都内のヘアサロン数店舗を経て2015年東京・大泉学園に「Hair make & Spa Tento-」を開店。2018年、海外出店のためメキシコ・カンクンへ移住。現地で主にブライダルのヘアメイクとして活躍し、2020年に帰国。サロンワーク、ヘアメイクの他に社外講師として社会的・職業的自立支援教育プログラム事業講師として活躍。 Hair make & Spa Tento- HP https://tento-hair.com 竹内陽子(たけうち・ようこ) 香川県出身。衣装デザイナー。文化女子大学服装学科卒業と同時にオリジナルブランドを立ち上げ、百貨店等で販売。2001年にバンクーバー インターナショナル・ファッション・ウィークに招待され、ファッションショーを行う。2002年より衣装デザイナーとして活動開始。カムカムミニキーナ、流山児事務所、温泉ドラゴン、チャイロイプリン、オフィスコットーネ等の作品の衣装を手がける。 陣内昭子(じんない・あきこ) 福岡県出身。劇壇ガルバ制作・絵本作家・臨床美術士・アートディレクター。1990年株式会社資生堂に入社。パッケージデザインから始まり宣伝制作全般のクリエイティブに従事。2017年に退社後、臨床美術士として美術療法活動に従事しながら、絵本創作や画家としての活動を始める。劇壇ガルバには第3回公演から制作・宣伝美術として参加。 中井美穂(なかい・みほ) 1965年、東京都出身(ロサンゼルス生まれ)。日大芸術学部卒業後、1987~1995年、フジテレビのアナウンサーとして活躍。1997年から2022年まで「世界陸上」(TBS)のメインキャスターを務めたほか、「鶴瓶のスジナシ」(TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MX)、「華麗なる宝塚歌劇の世界」(時代劇専門チャンネル)にレギュラー出演。舞台への造詣が深く、2013年より2023年度まで読売演劇大賞選考委員を務めた。