【過去最大】直近のドル売り・円買い介入「約9.8兆円」…その“原資”が判明【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。
●財務省が発表した外貨準備残高の増減から直近実施されたドル売り・円買い介入の原資を探る。 ●4月末の証券残高は3月末から169億ドル減、4月29日とみられる介入は米国債売却で実施か。 ●5月2日も米国債売却で実施とみられ介入資金は十分用意可能との財務省の強いメッセージに。
財務省が発表した外貨準備残高の増減から直近実施されたドル売り・円買い介入の原資を探る
財務省は6月7日、5月末時点における「外貨準備等の状況」を発表しました。財務省はこれに先立ち、5月31日に外国為替平衡操作の実施状況を発表しており、4月26日から5月29日までの外国為替平衡操作額は9兆7,885億円だったことを明らかにしました。なお、為替介入の原資には、財務省所管の「外国為替資金特別会計(外為特会)」の資金が用いられ、外為特会の外貨は外貨準備に計上されています。 直近では、日本時間の4月29日午後と5月2日早朝に、ドル売り・円買い介入が行われたとみられていますが、その際の介入原資は、月次ベースで公表される速報性の高い外貨準備の内容を検証することによって確認できます。具体的には、4月29日分であれば3月末と4月末の外貨準備残高を、5月2日分であれば4月末と5月末の外貨準備残高をそれぞれ比較し、残高変化の大きい項目が、介入原資と推測されます。
4月末の証券残高は3月末から169億ドル減、4月29日とみられる介入は米国債売却で実施か
外貨準備で介入原資となりうるのは、「外貨」のうち、米国債をはじめとする外国債券などの「証券」と、海外の中央銀行や国際決済銀行(BIS)などへ預け入れる「預金」です。ドル建ての預金は、そのままドル売り原資として使えますが、証券に計上される米国債を原資とする場合、いったん市場で売却し、現金化しなくてはなりません。介入には米当局の理解が必要ですが、米国債の売却を伴う場合は、相対的にハードルが高いと考えられています。 そこで、まず3月末と4月末の外貨準備残高について、項目毎の残高変化をみると(図表1)、証券の残高が約169億ドル減少しており、これが外貨準備残高減少の主因となっています。そのため、日本時間の4月29日午後に実施されたとみられるドル売り・円買い介入は(4~6月期の実施日と日次の介入実績は8月上旬に公表予定)、米国債を売却する形で実施された可能性が高いと思われます。
【関連記事】
- 【過去最大】直近のドル売り・円買い介入「約9.8兆円」…その“原資”が判明【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
- 【日銀会合】国債買い入れ、もし「減額決定なし」でも早晩に何らかの決定が示される可能性は高い【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
- 「超円安リスク」と「円急騰シナリオ」…ただ事では済みそうにない“ドル円の今後”【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
- 「大谷翔平選手がホームランを打つと、日経平均株価が上昇する」というスゴい現象【エコノミスト・宅森昭吉氏】
- 30~50代の5人に1人が「新NISAを始めました!」でも…「新NISAはやめておけ」といわれる7つの理由