旧ジャニーズ事務所、性加害謝罪から1年 被害者「風化させるな」訴え
旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.=スマイルアップ)が創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害を認めてから1年が過ぎたことを受け、被害当事者3人が10月9日、日本記者クラブ(東京都)で会見を開いた。被害者らは「問題は風化の一途をたどっている。これから育っていく子どもたちを守るため声を上げ続ける」と口をそろえて強調した。会見も被害者からの申し入れで行なわれた。 ジャニー氏の性加害問題は、昨年3月に英BBCがドキュメンタリーを放映。元所属タレントらの告発が相次ぎ、同8月には国連人権理事会・ビジネスと人権作業部会の調査が入り「数百人の被害疑惑」を認定した。 同事務所は昨年9月7日に記者会見を開き、性加害を初めて認めて謝罪。同10月には社名をスマイルアップに変更し、被害者の補償業務に専念することとなった。同社が設置した「被害者救済委員会」は今年9月30日、この1年間に999人が被害を申告し、うち504人と補償内容で合意したことを明らかにした。 今回の記者会見に臨んだのは、アイドルグループ「忍者」元メンバーの志賀泰伸氏(56歳)、元「ジャニーズJr.」の長渡康二氏(41歳)と中村一也氏(37歳)。3氏は補償先行に疑義を唱えた。 志賀氏は「非常に残念な展開。補償金を払ったから終わりでよいのか。補償基準は不明確。申請が困難な人への環境作りはされているのか。顕在化していない人はもっといる」とし、全容解明と再発防止策を求めた。 長渡氏は「補償金をもらったからといって、心は癒えたかというと、まったくもってノー。自分はあんな経験をしたことで一生幸せになれないと思っていた。被害者はそれぞれトラウマを抱えている。それを放置して幕引きをさせては絶対ならない」と訴えた。 顔や名前を出して性加害を告発した被害者は「売名だ」などと激しい誹謗中傷にさらされた。 「一言でいうと、この1年なんとか生きてきた」と述懐する中村氏。「約500人も被害補償をした問題なのに、今はなかったかのような風潮。スマイルアップ社は、この問題を基盤として社会啓発、再発防止につなげることが社会的責任ではないか」と指摘した。 中村氏は、性被害を告白した後、昨年自死した40代男性の妻からの手紙を読みあげた。妻は「旧ジャニーズ事務所は自分たちの保身しか考えていないように思う」「主人も家族も二次被害にあってきたが、少しでも未来の子どもたちが過ごしやすい世の中になるよう願っている」とつづっていた。