【イマドキの大学ゼミ】「現地で、言葉を失った」 能登半島地震の液状化現象を調査
いつどこで起きるかわからない地震や自然災害の被害を、どうやったら減らすことができるのでしょうか。関東学院大学理工学部の規矩大義(きく・ひろよし)教授の研究室では、自然災害によって地盤にどんな変化が起きるかについて研究しています。なかでも地震で液状化現象が起きるメカニズムを解明し、防災に役立てようとしています。調査や研究の面白さは、どんなところにあるのでしょうか。 【写真】「めっちゃ山の上にある」キャンパス、それでも…都心部の志願者を集める大学
研究室データ
関東学院大学工学部 地盤防災工学研究室 研究分野:地盤防災工学 ゼミ生:18人(男人15人:女3人)(2024年4月時点)
能登半島地震の被害を見て
地震による液状化現象は、東日本大震災で広く知られるようになりました。地震の震動によって、地盤を支えている砂粒同士の結びつきがバラバラになり、地下水に砂が浮いたような状態になって、地盤が液体化する現象です。軟らかい砂地盤の土地で起こりやすく、建物が傾いたり、マンホールが浮き上がったりする被害をもたらします。 6月上旬、研究室の仲間とともに石川県内灘町にやって来た理工学科土木・都市防災コース4年の深澤健太さんは、能登半島地震の被害を目の当たりにしました。 「液状化の被害は写真でしか見たことがなかったので、実際に現地に来て言葉を失いました。地面から砂が噴き出した跡があちこちにあり、電柱が倒れ、家が傾き、道路はぐにゃぐにゃと曲がっていました」(深澤さん) 今回は5日間滞在し、教授と助教の指導のもと、液状化の被害があった土地の地盤を調査しました。液状化しやすい砂の層がどこに分布しているのか、その層がどんな傾き方をしているのか、地層の内部構造を地表から調べました。 内部構造が弱いところと、実際に被害の大きかったところが一致すれば、地層の構造から将来の被害を予測できるようになります。調査の後に模型による実験、現場での検証、数値解析などをして、今後の防災に生かすのが研究の目的です。
ハンマーをふるって地盤調査
どうしたら地表から地中の様子がわかるのでしょうか。調査方法の一つが「表面波探査」です。地面に設置した機械をハンマーで打ち、その振動が地下に伝わる速度を測定します。硬い地盤は伝わる速度が速く、砂などの軟弱な地盤は遅いため、それによって、どのくらいの砂の層があるかなど、地盤の構成を知ることができます。 今回の調査ではもう一つ、「動的コーン貫入試験」という方法も用いました。機械を使って杭を地中に打ち込み、何回の打撃で地中へ杭が、一定長さ入ったかによって、地盤の硬軟や液状化に対する抵抗性を測定します。地盤が軟らかければ、少ない回数で杭が地中に入っていきます。 「地盤という目に見えない部分が、調査によって明らかになっていくのがいちばん面白いところです。調査は大変ですが、それより興味のほうが大きいですね」 強い日差しの下でハンマーを何度もふるい、一日中屋外で過ごすので、体力的にも鍛えられました(笑)。調査中もその都度、規矩教授に相談し、指導を仰ぎました。