自民党総裁選討論会:経済政策の具体的な議論は深まらず:高市氏は日銀の利上げに明確に反対
構造改革・成長戦略の議論は高まらず
アベノミクスの第3の矢であり、企業の投資を促す構造改革、成長戦略については、候補者すべてが支持するところだろうが、具体策の議論は深まらなかった。成長戦略については、岸田政権も推進してきた。「資産運用立国実現プラン」を通じた「貯蓄から投資へ」、「三位一体の労働市場改革」、「少子化対策」、「外国人材確保」、「インバウンド戦略」などであるが、それらをどう評価するかや継承するか否かといった議論も出なかった。 唯一労働市場改革の議論については一定程度高まったが、議論の中心は解雇規制の見直しの是非に集中した感があり、いかにして労働移動を高めて産業構造の高度化、成長力強化につなげるかという、より重要な議論は深まらなかった。
「聖域なき規制改革」はやや看板倒れか
構造改革の一環である規制改革については、小泉氏と高市氏の間で、ライドシェア全面解禁の是非を巡って議論が戦わされたが、全体としては盛り上がりを欠いた印象だ。 小泉氏は、規制改革を進めた小泉元首相を父に持つことから、積極的な規制改革を掲げることが期待されていた。同氏は「聖域なき規制改革」を掲げたが、実際に同氏が示した規制改革は、解雇規制の緩和やライドシェア全面解禁などに限られた。岩盤と言われた医療分野での更なる規制改革を目指す、などといった非常に意欲的なものではない。この点からやや期待外れ、看板倒れの感がある。 岸田政権は、小泉政権が進めた規制改革は、格差を拡大させたとして当初は否定的だった。功罪の議論も含め、総裁選ではこの規制改革についても、もっと議論を深めていって欲しい。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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