空母化した護衛艦「かが」前艦長が明言した“デメリット”とは それでも米国へ行く意義
呉基地に戻ってくるのは年の瀬
海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「かが」が2024年9月17日、広島県の呉基地を出港しました。 【艦首形状だけじゃない!】これがF-35B戦闘機を運用するための改造ポイントです(写真) 「かが」は米カリフォルニア州サンディエゴ沖へ向かい、10月5日から11月18日にかけてF-35Bの短距離発艦や垂直着艦など艦上運用に必要な検証を実施。12月15日に呉基地へ帰港する予定です。 今回の試験は「令和6年度インド太平洋方面派遣(IPD24)」の一環で、「かが」には研修のためパイロットや整備員など約20人の航空自衛官が乗艦しています。 F-35Bの艦上運用試験はアメリカ海軍や海兵隊による協力の下、発着艦試験を行う専属チーム「ITF(統合試験部隊)」の支援を受けて実施されます。「かが」ではF-35Bによる垂直着艦から、エレベーターを利用した飛行甲板と格納庫内の移動、そして短距離発艦といった一連の動きを複数回にわたって行います。試験を通じ、搭載されている各種機器の動作や艦上における機体の取り回しなど、今後の改修や本格的な固定翼機の運用に反映させるため必要なデータを収集することが目的です。 今回の派米に先駆けて「かが」は、今年(2024年)3月までJMU(ジャパンマリンユナイテッド)呉事業所で「空母化」に向けた最初の改修が行われており、その際に艦首部分がF-35Bの発艦に適した形状へと変更されています。 この第1回特別改造工事を終えた際、「かが」艦長(当時)の國分一郎1等海佐は「これだけの大きな工事は海上自衛隊にとって初めて。大きな改修、改造を得てまずは一安心というのが率直な感想だ。今後については、乗組員が訓練を通して練度を向上させ、適切に多機能な運用をしていくと思っている」と話していました。
甲板だけじゃない 航空管制室も一新!
改めて「かが」を見てみると、F-35Bの運用を意識した、さまざまな装備やマーキングが新たに施されたことがわかります。 飛行甲板の中央に引かれた紅白の線はセーフティ・パーキングラインで、右舷側のエプロンと左舷側の滑走路とを分けています。ヘリコプター・スポットを貫く黄色の線はF-35Bが滑走する中心線に当たるトラム・ラインで、艦首に引かれているのが滑走路の先端を表すバウ・ラインです。ちなみに「かが」では、バウ・ライン中央に飛行安全を願って、同艦のロゴマークに描かれている「海鳥」があしらわれています。 バウ・ラインから250フィート(約76m)地点に引かれているのが、F-35Bが推力ノズルを下に向けて上昇を始めるショート・テイクオフ・ローテーション・ラインです。第4、第5スポット付近はF-35Bが着艦する際のジェットエンジンのブラストに耐えられるようにするため、耐熱塗装が施されました。 アイランド後部には、進入してくるF-35Bのパイロットに適切な高度を示す光学着艦装置(OLS)を設置。夜間でも運用が出来るよう灯火装置を設けたほか、動揺を防止するためのフィンスタビライザーの増設なども行われています。ただ艦内については、F-35B関連の改修が行われておらず、第2回特別改造工事で艦内の搭乗員待機区画などを整備する予定です。 航空管制室は飛行甲板側の窓が拡張されました。案内していた「かが」の乗組員は「この窓が大きくなったことによって、航空機の発着艦がより見やすくなっている」と説明していました。 ここには、飛行長(Air Boss)、飛行甲板管制官(DECK)、発着艦管制官(LSO)それぞれの椅子が設けられ、その後ろには飛行甲板と格納庫内にある機体を視覚的に把握する「ウィジャボード」が置かれています。