川勝平太・静岡県知事に聞く(全文1)日本の人口停滞は平和な時代に起こる
人口減少期に入った日本。推計では2060年には、現在の約3割の人口を失い、総人口9000万人を割り込むと考えられています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)。 過去に経験のない規模と速さで進む人口減少を、各自治体の首長はどのようにとらえ、どのようなビジョンで舵取りしていくのか ── 。県内の人口減少対策で有識者会議をつくり、長期ビジョンを策定した静岡県の川勝平太知事に話を伺いました。(2017年3月取材)
日本の人口は平和な時代に停滞する
── きょうはよろしくお願いします。 お願いします。 ── 日本が人口減少期に入ったということで、まずは、静岡県の人口減少をどのように捉えているか教えてください。 そうですね。これは日本全体の人口減少と無縁ではありませんから、その一つの静岡県における現象ということ、日本の人口減少として捉えております。 ── 静岡県ならではの側面で考えている部分はあるのでしょうか。 それはもちろんあります。そのために、現状分析をしなくちゃいけないわけですね。しかし、さきほど申しましたように、人口減少というのは、日本全体で起こっているわけでしょう。そして、興味深いことがあるわけです。それは、鬼頭宏さん(※歴史人口学が専門。静岡県の「人口減少問題に関する有識者会議」座長を務めた。静岡県立大学長)の本にもありますけれど、平安時代と江戸時代に人口が、減少はしていませんけれども、停滞しているわけですね。 どんな時代でしょうか。それは平和な時代なんですよ。それは彼は言っていないんです。弥生、それから奈良時代に入って、そして平安は、平和の時代なんですよ。平将門が東京に出たり、瀬戸内海に藤原純友が出て、そういう内乱がおさまりますと、清少納言だとか、源氏物語とか書かれる時代になりまして、源平の合戦が起こるのは、だいぶん後ですね。ですから、平安時代は平和の時代です。 それから徳川時代。江戸時代当初は、戦乱の時代から徳川に代わるわけですけれども、まだ、大坂冬の陣・夏の陣がありまして、それから島原の乱とかがあって、あと乱というほどのはないでしょう。赤穂浪士の討ち入りぐらいですよね。これはもう内乱というにはあまりにも小さなもので、徳川天下泰平なんです。天下泰平、すなわち平和な時代には、人口が停滞する、これが日本の人口動態の中で見られるわけですよ。そして平和な時代を喜ぶのは誰でしょうか。女性です。女性は、争いを好まないですよね。命を大切にする存在です。 ですから、女性が活躍するんです。女性の活躍の場ができるわけです。そういうわけで、蜻蛉日記だとか、更級日記だとか、そうした類いを書いて、それが日本の文学の頂点の一つを形づくっているわけでしょう。そして、江戸時代になりますと、武士の鑑(かがみ)として吉良上野介を討ったにもかかわらず全員切腹でしょう。だから、主君のかたき討ちをしてもお家の再興もならない。じゃあ、だめだということで、同じ年に、曽根崎心中、心中というのがはやり出すんですよ。心中って誰がやるんでしょうか。男女共同参画です。これはあまりいい共同参画じゃありません。けれども、その道行きを聞いていかれると、なかなか涙なしには聞けない、死ぬ以外に2人の幸せはない。大体、手を引っ張っているのは女性ですね。