川勝平太・静岡県知事に聞く(全文1)日本の人口停滞は平和な時代に起こる
少子化のデータの背景にある人の心を見るべき
── 日本の人口減少の節目が、何回かあったことは鬼頭先生も書いています。そしてそれは女性が活躍する平和な時代なんですね。 そうです。 ── 女性が活躍していると人口停滞がどうしても起こってしまう。現在は、知事の言う「女性ルネッサンス」で、停滞が行き過ぎたことで少子化も進行している、というところですか。 そうです。人口減少は統計で出てきますよね。人口の動態も、「ことしは何人子供が生まれたか」とか、日本の今の人口が1億2000万、とか出てくるでしょう。数字やグラフが出てくると、無機質に見えるじゃないですか。 ── そうですね。 けれども、その統計の後ろには、一人ひとりの家族計画があるわけですね。ですから、「1人しか産めないじゃないの」、「2人欲しいわ」とか、いろんな家族が、夫婦で考える。そこには人間の意思が働いているわけです。丙午(ひのえうま)ってご存じですか。1966年ですよね。丙午のときには、ガタッと女性の人口が落ちるでしょう。 ── ミレニアムのときは、逆に子供がたくさん生まれましたね。 そういうことなんです。これは算数ではないから、1足す1は2ではありませんので、すべての統計の数字の後ろに人間の意思が働いている。日本人の男女の意思が表れた結果があの数字だと。日本は、1970年代にいわゆる人口置換水準(※日本における人口が増加も減少もしない均衡した状態の出生率)の2.07を切りますね。そして、人口のピークが、21世紀に入りまして、静岡県は平成18(2006)年か19(2007)年ぐらいにくるのですが、日本もほとんど同じ時期に人口のピークがきて下がっていっていますけれども、その後ろには、人間の意思が働いているのです。 ですから、日本の人口は、合計特殊出生率、すなわち女性が一生の間に子どもを産む数ですが、それが最低のときに国が1.2幾つになった(※2005年合計特殊出生率1.26)。このままいけば、日本の人口は100年後にはゼロになってしまうということが言われ、私はそういう人たちに対して関西弁の「アホか」と。本当にもう、全然人間のことを知らない人がいる。 温度だとか、光の屈折だとか、そうした物理現象と、人間の行動の帰結としての数字は全く違う。ですから、心ひとつで変わるということをまず心得なくてはいけないというふうに思っているわけです。