皮膚がんの原因になることも...日本人が陥る「温水洗浄便座への依存」
出残り便がある人は、温水洗浄便座の水で肛門を刺激して硬くなった便を出そうとしたり、下着を汚さないように必要以上におしりを洗ったりしています。そして、多くの日本人が、おしりに当たる水の刺激に慣れて、温水洗浄便座がないトイレでは排便できない「温水洗浄便座依存症」になっています。(イラスト:うてのての) ※本稿は、佐々木みのり著『便秘の8割はおしりで事件が起きている!』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
出口に便があるから、おならをすると下着が汚れる
「下着に便がつく」、「おならをすると便が出る」といった予期せぬ便もれ(便失禁)の悩みを抱えている人が増えています。 便のニオイが気になって人づきあいが悪くなったり、仕事や勉強に集中できなくなったりなど、さまざまな悪影響を引き起こします。しかし、筋力の低下している高齢者でも、痔や病気でもなく、このような症状がある場合は、便失禁ではなく「ニセ便失禁」かもしれません。 出残り便があると肛門にも便が挟まった状態となることがあり、下着を汚しやすく、おならのような少しの刺激でも便が外に出やすくなって、便もれ事件が起きてしまうのです。 肛門は、排便時以外は「肛門括約筋」によって便が外にもれないようにしています。 しかし、肛門括約筋は常に一定の力で締まっているわけではなく、便が近くまで下りてくると反射的にゆるむように、締まりがきつくなったりゆるくなったりしています。 まれに、締まりがゆるくなった瞬間に出し切れずに肛門に挟まっていた便がヒョイと外に出て、下着を汚すことがあります。 これが、「ニセ便失禁」の真相です。便がもれるのは必ずしも肛門の締まりがゆるいわけではなく、肛門の締まりが正常な人にも起こりうる問題です。
温水洗浄便座で便汁を作っていませんか?
「下着が便で汚れる」という人の中には、便というよりも便と水が混ざった「便汁」が原因となっていることがあります。便汁とは、排便後におしりを拭いてもキレイにならず、温水洗浄便座を使って念入りに洗ったときに温水が肛門の中にまで入ってしまい、中の出残り便と混ざってもれ出てしまったものです。 そして、まさか温水洗浄便座の水が原因とは思わず、便失禁だと思って病院にやってきます。しかし、いざ診察してみると、ほとんどの人は肛門の締まりに問題はなく、痔などもありません。出残り便をしっかり出し切れば下着の汚れもなくなります。 温水洗浄便座の水は便汁となるだけでなく、デリケートな肛門の皮膚を傷つけてさまざまなトラブルを引き起こします。 出残り便がある人は、温水洗浄便座の水で肛門を刺激して硬くなった便を出そうとしたり、下着を汚さないように必要以上におしりを洗ったりしています。すると濡れた紙が皮膚についてかゆみを起こしたり、肛門のまわりの皮膚がただれる「肛門周囲皮膚炎」や、肛門縁の皮膚が切れる「切れ痔」の原因となったりします。 そしてもれなく、おしりに当たる水の刺激に慣れて、温水洗浄便座がないトイレでは排便できない「温水洗浄便座依存症」になっています。 少し前までは、医師たちも温水洗浄便座の使用を勧めていたので驚くかもしれません。ですが、近ごろ、おしりの洗いすぎやケアのしすぎによる弊害が問題となっています。おしりの洗いすぎは、痔をはじめさまざまなトラブルを招きます。 洗いすぎることで皮膚を守っている皮脂膜がはがされて皮膚が乾燥してごわごわになり、かゆみの原因となります。 さらに、温水洗浄便座の水圧によっても皮膚が傷つき、炎症が起こることも。ひどくなると皮膚がんを招いてしまい、まさに「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということに。おしり洗いは、ほどほどが大切です。