製造期間わずか[10カ月]!? 初代[シビック]のスポーツモデルである[シビック1200RS]が想像以上にヤバい
■オーバーホール済みのエンジンは超元気!
早速、試乗に向け運転席に乗り込んだ。コンパクトなボディなのにコクピットに圧迫感がない。ガラス面が広く感じて前方の視認性に文句はない。 シートはオリジナルから別のシートに変更。リクライニング付バケットタイプでホールド性は充分ある。前後スライドは14センチほど可動するので誰でも運転できる仕様だろう。 イグニッションキーでセルを回した瞬間にエンジンが「ブォン!」と元気に目を覚ます。アクセルを踏みブリッピングすると「オレはまだまだ現役だぜっ!」と言わんばかりに軽快なレスポンス。真夏にもかかわらず始動性は抜群でアイドリングも安定している。 クラッチペダルを踏みギアを1速に入れる。ペダルは軽く、着座位置からのペダル配置が意外といいから、足元の操作に気難しいところはない。駆動の伝わる感覚もわかりやすいので、マニュアルに不慣れな方でも少し練習すれば、コイツと仲よくなれるはず。
■50年前のクルマとは思えない走り
今回も一般道と高速道路でインプレッションを展開する。走行し始めてすぐに感じたのは、ハンドリングが想像以上にシャープなこと。この年代では珍しくラック&ピニオンが採用されていることも理由かもしれない。 前輪駆動レイアウトとスポーツチューニングされたサスペンションのおかげで、コーナリング時の安定性が高く、安心して曲がれる。 サスペンションは、4輪ともマクファーソンストラット式サスペンションで構成された全輪独立懸架。これにより軽快なハンドリングと乗り心地をバランスし、ワインディングやタイトなコーナーでも的確なコントロールが可能になっている。 実際、旋回性を試してみるとロール量は大きいが、サスペンションがしっかり動いている。足が硬くなるとタイヤに負担がかかりシビアな挙動になるので、街乗りならノーマルサスペンションのほうがバランスがいいと実感した。 高速道路に入り毎度のごとくアクセルを思いきり踏み込んだ。エンジンフィーリングは最高!7000rpm付近までスムーズに吹け上がり、色あせた初老どころか今でも現役バリバリの色気すら感じさせるイケオジという印象。 最高出力は76馬力だが、アクセルONで俊敏に加速するのは、車両重量が軽自動車並みということも理由のひとつだ。軽量な車体も相まって、ブレーキ性能も申し分ない。 フロントにはディスク、リアにはドラムブレーキが装備されていて、当時のコンパクトカーとしては充分な制動力だ。高速走行において直進安定性は古さを感じさせないほど楽にドライブできる。高いスピード域になると若干不安定にはなるが、1970年代の大衆車に優れたエアロダイナミクスを期待してはいけない。 F1で世界に旋風を巻き起こした本田技研のエンジンは、50年近く経った今でも一般的な日常の運転だけでなく、よりアグレッシブな走行にも対応できることに、ただただ驚かされる。 1200RSは、中古車市場でほとんど登場することのない希少な絶版車。しかし、今なら(取材当時)この個体が購入可能だ。 快適な装備は付いてないけど、旧車には現代のクルマにない魅力が詰まっている。壊れそうなクルマがこんなに高いの?と疑問を持つ方もいると思うが、そういう方には旧車をオススメはしない。そこにはお金で買えないロマンがある。