「103万円の壁」撤廃されたら学生の7割「もっと働きたい!」...学生には吉か?凶か?/マイナビ・宮本祥太さん
「経済的ゆとりがない学生」=「学資や生活に困っている」わけではない
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたマイナビのキャリアラボ研究員宮本祥太さんに話を聞いた。 ――私はかなり多くの学生が、「年収の壁」を意識して働いていることに驚いています。「103万円の壁」どころか「106万円の壁」「130万円の壁」を意識して働いている人が合計2割もいます。それほど今の学生は、学資や生活に困っており、経済的ゆとりがない人が多いということなのでしょうか。どんな理由がありますか。 宮本祥太さん 年収103万円を超えると、自身の収入だけでなく、親などの扶養者の収入にも影響が出てきます。多くの学生が年収の壁を意識する理由としては、親から「103万円を超えないように」と伝えられ、言いつけに従って就業調整をしているケースもあると想像します。 また、学生の支出はさまざまです。授業料や家賃・光熱費が含まれることもあれば、食費や日用品、交際費、就職活動、留学のための貯金......と、いろいろ想定されます。親元から通学しているか、仕送りを受けているか、奨学金などによっても必要な収入額は異なります。 そのため、全員が「経済的ゆとりがない」=「学資や生活に困っている」というわけではなく、学業に影響が出るほどゆとりがない人もいれば、贅沢や不要な出費は控えるけれど、食費や交際費などにはそれなりの額を使いたいという人もいると考えます。
年収の壁を引き上げると、学業・バイト・暮らしのバランス調整が難しくなる
――それにしても、アルバイト学生が多いことが気になります。年収90万円以上を希望する学生が3割以上います。現在、日本学生支援機構から奨学金を支給される学生は約半数ですが、奨学金だけでは足りないのでしょうか。学業に影響しないかと心配です。 宮本祥太さん マイナビの「2025年卒大学生のライフスタイル調査」では、物価高によって生活に受けた影響として、「食費が上がった」「学食・生協の値段が上がった」「水道光熱費が上がった」と訴える学生が多くいます。 特に1人暮らしの学生では6割以上が「食費の値上げ」を一番に挙げており、暮らしに必要なお金が増えている様子がうかがえます。 また、調査では8割以上が「定期的なアルバイトをしている」と答えており、学生にとってアルバイトは不可欠な状態になっています。このことから、年収の壁と物価高の影響で、これまで以上に学業・アルバイト・暮らしのバランスの調整が難しくなっていると考えられます。 ――政府与党が、「103万円の壁」の引き上げに取り組み始めましたが、学生のアルバイト生活にどんな影響を与えると思いますか。 宮本祥太さん 今回の調査でも、年収の壁がなくなった場合、「もっと働きたい」と答えた学生は7割を超えています。現在でも103万円以上の年収を希望する人が2割近くいますから、収入をもっと増やしたいという潜在的なニーズがうかがえます。 年収の壁の引き上げによって、学生がアルバイトに費やす時間がさらに増えることも考えられます。そうなると、逆にこれまで以上に学業・アルバイト・暮らしのバランスの調整が難しくなっていくかもしれません。