新幹線を生かしたまちづくり、公園内に「新幹線の見える丘」…ふるさと納税返礼品に車両所の見学ツアーも
博多駅と新大阪駅を結ぶ山陽新幹線が全線開業して今年50年を迎える。この間、JR西日本博多総合車両所(福岡県那珂川市)は乗客の安全を支え、福岡県内二つの沿線駅は、にぎわいを生み出してきた。時代と並走してきた新幹線の拠点は、これからもレールの先の夢に向かって走り続ける。 【写真】ドクターイエローの焼き印が施された菓子
「来たよ!」
昨年10月中旬、同県春日市の春日西多目的広場公園。公園近くのJR西日本博多総合車両所から黄色い車体の検査用車両「ドクターイエロー」が姿を現すと、子どもが指をさし、歓声を上げた。この日は車両所でイベントがあり、珍しい車両を目当てにした親子連れらが公園に集まっていた。
公園ができたのは今から1年ほど前。元は車両所建設に伴い、1975年度に行われた発掘調査で弥生時代の墓などが見つかった場所だ。春日市は遺跡として長年保全していたが、2023年にJR西日本から寄付され、公園を整備した。園内には「新幹線の見える丘」と名付けられたエリアもある。
同じ年に同社と包括連携協定を結んだ春日市は、新幹線を生かしたまちづくりに乗り出した。ふるさと納税の返礼品に、車両所の見学ツアーや新幹線ゆかりのグッズを追加。ドクターイエローが箱に描かれた新たな土産用の菓子も地元の和菓子店などと開発した。公園は今後もさらに整備される計画で、丘には展望デッキが設けられる。
公園近くの白水ヶ丘地区自治会長・吉川寿勝さん(71)は「以前は道路に車を止めて新幹線を見る人もいて危なかった。公園になり、子どもから高齢者まで利用でき、訪れる人も安全に楽しんでもらえる」と喜ぶ。
回送新幹線が通勤・通学の足、人口増を後押し
車両所がある那珂川市も、この50年で大きく様変わりした。車両所ができた当時、周囲には農地が広がり、2万人に満たなかった人口は、15年の国勢調査で5万人を超え、18年に町から市に昇格した。
人口増を後押ししたのは、1990年に開業したJR博多南線(8・5キロ)と博多南駅だ。博多駅と車両所間の回送新幹線を使い、博多駅まで10分、片道290円(いずれも当時)の在来線特急は、通勤・通学の足として人気を呼んだ。