「何者かになるまで帰れない」生き残りをかけた元宝塚・愛華みれの研究科での奮闘「批判は毒ではなく、特効薬だととらえて」
振りつけで「90度に足を上げる」と決められていても、周りはもっと高く足を上げる。でも私が同じことをすると次のターンに間に合わないから工夫するしかなくて。みんなが足を上げた一瞬で次のターンが同じに見えるようにタイミングを揃えると。今では笑い話になりますが、「あなたはその環境の中で、よく生き残れたわね」って。ダンスの基礎がないまま、実力が追いつかないままやってくる自分のポジションにとにかく必死でした。
■批判が「特効薬」になる場合も ── 宝塚での経験を通じて心の支えとなったものは何でしょうか? 愛華さん:何があっても必ず舞台に立たなければいけないという覚悟だったと思います。毎日、3000人もの観客の前に立って、その後にはたくさんの感想が寄せられる。その「嵐」のような反応のなかで、自分らしさを保ち続けるメンタル力が自然と培われていきましたね。 たとえば「あなたは鼻が曲がっているわよ」「眉毛が左右違うわね」「声が枯れていますね」など、率直なご意見をいただくこともある。でも同時に「それが素敵です」「そのハスキーな声が魅力的」と言ってくださる方もいて。その方たちのために頑張ろう、笑顔を届けようと、そうやって前向きなことを見つめていく習慣がついていきました。
── 今は、周囲からの意見や批判を恐れて、なかなか挑戦に踏み出せない若い方も多いかと思います。 愛華さん:私の経験からお伝えしたいのは、意見をくださる方はそれだけ自分のことを見てくださっているということ。あえて自己肯定をして少しうぬぼれてとらえてみれば、厳しい意見を言われる人は自分では気づかない部分に目を向けてもらっているんですよね。 私も宝塚で「何が素敵なのか」を、周りの声を通して学んでいきました。だから批判的な意見を受けたとき、すぐに「ダメだ」と蓋をしてしまうのではなく、「これは本当にマイナスなのかな?」と立ち止まって考えてみる。そうすると新しい発見があるんです。