いきなりステーキ、なぜ高級路線へ?「肉一枚1980円」すき焼き専門店の開業に踏み切った「明快な理由」
すき焼きは1980円から3850円まで3種類
12月6日、東京・新橋駅の南側で銀座寄りの場所に「すきはな」という店がオープンした。路面店で外観はちょっと高級な料亭の雰囲気を醸すほか、店頭に置かれたデジタルサイネージが、店内の様子やメニューの内容などを発信している。 【写真】豆腐、野菜ゼロ…いきステ「すき焼き」を実食、肝心のコスパは 同店は「すき焼き専門店」であるが、従来の野菜や豆腐の入ったすき焼きの店ではない。和牛・国産牛の一枚肉を、店のスタッフがお客の目の前で焼いてくれて、それを生卵にくぐらせてご飯と一緒に食べるという趣向。ご飯の二膳目は卵かけご飯にして食べるというものだ。 大まかな構成は「定食」といった感覚だ。和牛ないし国産牛の一枚肉、生卵、お新香、ご飯、味噌汁、あおさ、食後のデザートとしてソフトクリーム、となっている。 メニューは牛肉のグレード別に分けられている。「国産牛すき焼きセット」1980円(税込、以下同)、「黒毛和牛すき焼きセット」2530円、「本日の特選和牛すき焼きセット」3850円の3種類だ。 サイドメニューは、3種類の牛肉の追加と、ご飯、生卵、味噌汁の追加。ドリンクは、生ビール、ハイボール、グラスワイン、日本酒、黒ウーロン茶、コカ・コーラ。このような具合に、実に割り切ったシンプルなメニュー構成になっている。 店内は茶室をモチーフにした高級感のある空間、客席はコの字型のカウンター席が15席ある。 注文すると、調理担当者が向かい側に立ち、お客の目の前に備えられたIHに鉄鍋をのせ、ここで牛脂を溶かし、後にザラメを溶かし、肉を焼きながら醤油で味を調える。牛肉が食べごろになると、取り皿に取り分けてくれるので、お客がその牛肉を生卵をくぐらせてご飯にのせていただく、という流れだ。
分かりやすく記憶に残る店
既製品の割り下は使わず、牛肉をザラメと醤油でお客の目の前で調整する。この方法によって、だんだんと美味しそうな匂いが漂ってきて、五感に訴えるものがある。 また、ザラメと醤油で整えた牛肉はご飯によく合う。野菜や豆腐の入ったすき焼きは、「ご飯と一緒に食べる」というシーンがあまり伴わない(あくまで筆者の考えだが)。その点、「すきはな」のこの食べ方は、おいしい牛肉を「ご飯と一緒に食べる」ということに大変よくマッチしている。 焼肉をはじめとする「肉」関連の外食は、相変わらず「食べ放題」が大きなファクターとなっている。その一方で「おいしい牛肉を、少しだけ食べたい」という客層も存在する。筆者もその一人で、そのニーズを満たしてくれるのは嬉しい限りだ。 さて、すき焼きとご飯の食事が終わると、ソフトクリームが小さな器に入れられて提供される。濃厚でかつさっぱりとした甘さで、「すきはな」オリジナルの定食を締めくくるという感じだ。 ちなみに筆者はこの日、「本日の特選和牛すき焼きセット」(この日は「松坂牛」)と追加肉で「国産牛」をいただいたが、この2種類の肉の食味は明らかに違っていた。そのため、「国産牛すき焼きセット」は日常使い、「本日の特選和牛すき焼きセット」は「自分にご褒美」という利用シーンを思い描いた。 この「すきはな」に入店してから、デザートのソフトクリームを食べ終わるまで25分。「高級店の雰囲気の中で、すき焼きの牛肉とご飯がおいしい店」というのは、分かりやすく記憶に残る。これから目的来店が増えていけば、早いうちにインバウンド客にも知れ渡ることになるに違いない。