バレーボール女子日本代表を強化部長・中村貴司が総括 「大きな自信になった」勝利とは?
【五輪を控えるなかでも勝ちにこだわった】 ーーそこから弾みをつけて、ファイナルラウンドでの銀メダル獲得となりました。 そうですね。ただ、ファイナルをどう戦っていくのかが非常に難しかった。日本はフィジカルの面で諸外国に劣るので、ファイナルが終わって1カ月後に五輪開幕ということで、スケジュールの問題があったと思います。 そうは言っても、ファイナルで世界と戦うという気持ちがみんな強くありました。そこでどう戦うかによって、五輪の目標をどうするか、メダルに挑戦するのかということにも関わってくる。五輪のことを考えないということではなく、目の前の世界との戦いも大切にしてファイナルを戦ったと思います。 ファイナルに出てくるチームとは、五輪で戦う可能性もありました。実際、ブラジルとも戦いましたし、そういうなかで、ファイナル準々決勝の中国戦は、五輪に照準を合わせるということで中国はAチームではありませんでしたが、ストレートで勝つことができました。 これは結果論だと思いますが、中国やセルビアのようにVNLでは別のメンバーを出して、Aチームは五輪に集中しても、五輪で結果が出る場合もあるし、出ない場合もある。その国ごとの方針もありますし、戦い方はいろいろあるので、どちらが正しいとは言えないのですが、日本はそうも言っていられないので、一生懸命戦って勝ち負けにこだわる方針でファイナルは戦って、ブラジルとの準決勝になりました。 ブラジルにはパリ五輪予選でもフルセットで惜敗したということもありましたので、やはりそこを破らない限りは、五輪で上位を目指すこともできない。ブラジルとはここ数年、フルセットが多くて、世界選手権での1戦を除いて、いつも負けていました。最後にひっくり返されるという状況だったので、本当によく頑張って勝ってくれたなと感じています。
【日本の生命線はセッターとリベロ】 ーー古賀紗理那さんも引退会見で、思い出に残る試合としてその準決勝のブラジル戦を挙げていました。3大大会でメダルを獲得したのが初めてだったと。 他の選手たちも同じですよね。だから、若い選手たちにもこのメダルがこれからのいろんな励みにもなってくれればいい。いい意味での自信を持ってもらいたいなと思います。日本が体格的に大きくなくてもなんとか世界と戦えるということは、大きな自信になるでしょう。みんなストイックに頑張ってくれたと感じています。 選手たちはそれぞれ納得いくまで個人のスキルを磨いていたと思います。そういった意味では、バレーボールに対してストイックに向き合っていました。 ーー女子は特にコンビ合わせも時間をかけてやっていかなければならないと聞きますが、現役時代にセッターだった中村さんから見てどうでしたか? 男子も女子もセッターであれば、アタッカーの特徴とか高さとか速さがある程度、コンビ練習していくうちにわかると思うんですけど、女子ならではの繊細なところはあるかもしれないですね。 日本の生命線って、やはりセッターとリベロだと私は思うんですね。ですから、眞鍋政義監督をはじめスタッフもセッターとリベロをすごく重要視していたと思います。もちろん、サーブのような個人技もありますけど、チームとして日本が世界と戦うためには、セッター、リベロの働きによってコンビネーションというものにつながっていくと思います。 ーー最終的に正セッターはベテランの岩崎こよみ選手が務めましたが、本来セッターを早い段階で固定していくほうが望ましいのでしょうか? 女子選手は例えば4年間のスパンであれば、その1年目と4年目は恐らく体力的にも技術的にも異なってくるのではないかと思います。体力が落ちていく選手ももちろんいますし、パフォーマンスが落ちていく選手もいます。逆に円熟味を増したベテランの選手がいい味を出すということもありますので、やはりチームづくりにおいてもいろんな部分で変化が出てくるのではないかと思います。 ですから、最終的には、その最後の五輪の年で一番活躍できる、調子のいい選手を最終的には選出したということになります。 ーー今回は東京五輪延期の影響で3年間とスパンが短かったというところでも、チームづくりにおいて難しかった部分はあったのでしょうか? 五輪の出場枠は、今回は交替選手がひとりいましたが、わずか12名という限られた選手で構成しなければならない。そういったなかではセッターも普通に考えれば枠は2名ですから、現場のスタッフ陣は、最終的に選出するにも難しい判断もありました。