阪神秋山拓巳と“マイク”仲田幸司に重なる遅咲き覚醒の条件
阪神の秋山拓巳(26)が9日、東京ドームでの巨人戦に先発、7回を投げ6安打2失点で7年ぶりの対巨人戦の勝利を手にして、チームは6連勝。4連続完封勝利という52年ぶりの記録を狙った巨人の菅野智之に投げ勝った。金本監督は「(勝因の)1番は菅野に投げ勝った秋山」と、今季2勝目を挙げた秋山を称えた。秋山は、2010年9月20日以来、7年ぶりの巨人戦勝利。入団8年目にして覚醒の兆しを見せている。阪神の過去にそんな遅咲きがいたか? と歴史を遡ると、25年前にあの左腕がいた。入団9年目の1992年にブレイクした仲田幸司氏である。そして、2人には、共通点があるのだ。 秋山が球界ナンバーワン投手に投げ勝った。「めちゃ緊張したのですが、序盤に点を取ってもらったので勢いにのって僕もどんどん攻めていけた」。初回に好調打線が4安打を集中。糸井、鳥谷のタイムリーで2点を奪い、菅野の城之内邦雄さんが記録して以来となる4連続完封を阻止。秋山は、2回にマギーにレフトポール直撃の5号ソロを被弾したが、大きな傷口とはならない。 4回には、一死二、三塁のピンチを作ったが、まず長野をストレートでスイングアウト。「前の打席で石川がいい当たりしていた。小林勝負で秋山のコントロールを信頼していた。押し出しはないなと」(金本監督)というベンチの指示で続く石川を敬遠で歩かせ満塁にして打率1割台の小林との勝負を選んだ。 外のカットボール。思惑通りにひっかけさせた。6回にも一死から阿部に左中間二塁打を打たれたが、タイミングのあっていたマギーをセカンドフライ、長野を三塁ゴロで失点に結びつけなかった。7回に、石川にソロアーチを許すが走者のいない場面でダメージには至らなかった。堂々たる巨倒である。 「野手の方に助けてもらいながらリズムに乗って投げることができた」 敵地のヒーローインタビューで居残った阪神ファンの喝采を浴びた。 これで2勝2敗、防御率は2.77。なにより秋山が凄いのは、その安定力だ。 クオリティスタート率の83.3%はリーグ2位、与四球率の0.69もマイコラスの0.68に次いで2位だ。ルーキーイヤーに4勝したが、その後6年で2勝しかしていない秋山が、8年目で間違いなく覚醒の兆しを見せている。結果が出なければ戦力外が通告される弱肉強食のプロ野球では珍しい遅咲きである。 しかし、阪神には過去に9年目に覚醒した投手がいた。マイクの呼び名で1992年に初の2桁、最多奪三振タイトルを獲得した仲田幸司氏だ。愛媛県立西条高からドラフト4位指名された秋山と同じく、仲田氏も沖縄の興南高からドラフト3位指名された高卒投手で、9年が経過してもまだ年齢的に20代中盤だった。 仲田氏は、9年目にブレイクするまでは通算33勝していて、秋山よりは実績はあったが、2桁は一度も勝てずエースになりきれなかった。だが、2人の8、9年目には、共通点がある。万人が評価するポテンシャルの高さを持っていることと、新球の会得と、投球フォームが安定したことの3点である。