「被災地を元気づける対局に」 棋聖戦会場の旅館女将、能登地震に見舞われた新潟市で願う
将棋の藤井聡太棋聖(21)=竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将の八冠=に山崎隆之八段(43)が挑む「ヒューリック杯第95期棋聖戦五番負」(産経新聞社主催)の第2局が6月17日、新潟市西蒲(にしかん)区岩室温泉の「高志の宿 高島屋」で指される。能登半島地震で大きな被害に見舞われた同市。五番勝負を30年近く裏方として支えている女将(おかみ)、高島基子さん(59)は「被災地を元気づける対局になれば」と願っている。 【写真】棋聖戦五番勝負の第2局が行われる「高志の宿 高島屋」 ■永世棋聖かけ挑む 今回の五番勝負で、唯一能登半島地震の被災地で行われる第2局。藤井棋聖が第1局に続いて連勝し、5連覇と、タイトルを通算5期以上保持した棋士に与えられる永世棋聖の資格獲得に王手をかけるのか。それとも、15年ぶりのタイトル挑戦となる山崎八段が勝利し、1勝1敗のタイとするのか。注目度の高い対局となる。 高島屋は、約260年の歴史がある老舗料亭旅館。明治11年に、明治天皇が北陸巡幸の途中で立ち寄ったことでも知られる。将棋や囲碁の対局の舞台として知られ、旬の食材を使った日本料理は棋士からも高い評価を得ている。 初めて棋聖戦五番勝負が行われたのは昭和58年(第42期)で、対局会場となるのは今回で26回目だ。 女将の高島さんは平成8年(第67期)から28年間、五番勝負を裏方として支えてきた。能登半島地震では高島屋は無事だったものの市内で大きな被害が出ただけに、「被災地の新潟市を元気づける対局になってほしい」と願っている。 対局はインターネット動画配信サービス「ABEMA」が生中継し、合間に高島さんの短いインタビューも入る。「その際、被災地を応援してほしいと呼び掛け、ちょっとでも元気になる話題を提供できれば」と考えている。 市によると、能登半島地震による市内の建物被害は計約1万7千棟。揺れで地盤が液状化し、傾いた住宅も多くあった。 昨年(94期)は、藤井棋聖が4連覇を決める会場となった高島屋。能登半島地震を受けて実施された観光需要喚起策「北陸応援割」では、藤井棋聖が対局した宿を目当てに訪れた観光客も多く、キャンペーン期間中(3月16日~4月26日)は満室が続いたという。 5月に訪ねると、道路に面した旅館入り口前に五番勝負開催を告知する大きな看板が立てかけられ、観光客がスマートフォンで記念撮影する姿も見られた。