村田諒太の系譜「豪気」を胸に濱本紗也が2階級上げて女子ボクシング東京五輪予選ライト級代表切符をゲット
アマチュア女子ボクシングの東京五輪アジア・オセアニア予選(2月3日から中国・武漢)へ出場する女子日本代表を決める「ボックス・オフ」が8日、東京都板橋区の東洋大総合スポーツセンターで行われ、ライト級では濱本紗也(20、日大)が釘宮智子(28警視庁)を判定で下し代表権を獲得した。濱本は、本来のバンタム級が五輪実施階級ではないため、2階級上げてライト級にチャレンジした。ロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級王者の村田諒太(帝拳)、元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏を生んだ名門、京都廣学館高校(元南京都高校)出身。脈々と受け継がれてきた「豪気」の魂を胸に東京五輪での金メダル獲得を目指す。
再審査を要求されての薄氷勝利
一度は、濱本の右手が上げられた。判定は4-1。だが、喜びも束の間。釘宮陣営がイエローカードを提示。判定に異議を申し立て再審査を求めた。判定の公正性を担保するために導入された「バウトレビュー」という新制度で、審判部を中心とした競技役員によって、再審査の受理、不受理を決めたあと、受理した場合、ただちに、その場でVTRとデータで検証される。 濱本はイエローカードが出されたことがしばらくわからなかったという。 「1ラウンドは取られた。2ラウンドは取った。3ラウンドはどうかわからなかったんです。イエローカードが出たことは、しばらく知らずにちょっと不安になりました。ここで私のボクシングは終わってしまうのかなって」 別室で審議が行われた。待つこと約10分。場内アナウンスで勝利が確定されたことを知った。 「まだボクシングで上にいけるな、続けられるなあ」 自然に表情が緩んだ。 第1ラウンドは動きが固く、釘宮のうまさと手数が一枚上手だった。釘宮は、全日本のライト級で2度優勝経験があり、7年前のロンドン五輪予選に出場、その後、ブランクを作り、昨年復帰してきた異色のベテランのサウスポーである。ちなみに仕事は婦人警官。 「緊張して見すぎて待ってしまいました。緊張の中でも自分のボクシングをしなければならないと、気持ちで前へいけたが、雑になった」 2ラウンドは、濱本が巻き返す。ストレート系のパンチを軸にまるでブルドーザーのように前へ出た。右ストレートがカウンターとなって何発か炸裂。右から入って右で終わるコンビネーションも効果的だった。釘宮を圧倒した。5人のジャッジ全員が濱本へ。釘宮は大きくペースダウンした。オープンスコアを濱本は見ていなかった。だが、1対1で3ラウンドが勝負であることはわかっていた 「勝つことしか頭になかった。細かいことは考えられない。ここで引いたらあとがない。技術面では考えずに残り3分間で持っているものを全部出す」 激闘になった。最後の五輪出場にかける釘宮はボディにもパンチを散らし、ステップを踏みながら、多彩にパンチや動きに変化をつけて主導権を握りにくる。だが、濱本も引き下がらなかった。ほぼ5分の展開から残り12秒で右ストレートがヒット。ジャッジ2人が濱本、3人が釘宮。「バウトレビュー」にもつれこむのももっともの際どい勝負だった。