ルノー、欧州CO2規制の軟化求める 「15%削減」は達成可能か? EV需要頭打ちに悩む
独VWも苦戦
しかし、EV需要の低迷はメルセデスに打撃を与え、欧州でのCO2削減が急務となっている。ケレニウスCEOは、来年発売するEVのCLAなどの新型車の需要が十分でなければ、他のメーカーと協力しなければならないかもしれないと警戒感を示した。 CO2排出量が目標値を超えると、1gにつき95ユーロ(約1万5000円)の罰金を台数分払わなければならない。これを回避するための鍵となるのが、より安価な新型EVを投入することだ。 フォルクスワーゲン・グループのオリバー・ブルーメCEOは決算説明会で、「たとえ1ユーロの罰金でも、正しくない投資だ。市場に投入する新しいBEVを主な原動力に、当社は製品攻勢を進める」と述べた。 今後は低価格のEVとして、傘下ブランドのスコダからコンパクトSUVのエルロックなどを発売する。 フォルクスワーゲンはすでに幅広い種類のEVを展開しているが、ICE車が売上の大半を占めているため、2025年のシフトに向けた準備が遅れている。 「我々の見解では、(2025年に)本当に問題を抱えているのはVWだけだ」と、環境保護団体Transport and Environmentの自動車担当シニアディレクター、ジュリア・ポリスカノヴァ氏はAUTOCARの取材で語った。 目標達成に向けてEV販売を急げば、フォルクスワーゲン・グループに20億ユーロのマイナスの影響を与える可能性があると、銀行のUBSは予測している。UBSのアナリスト、パトリック・フンメル氏は投資家向けメモに「CO2規制の遵守が大きな負担となる可能性がある」と指摘した。
来年EV販売は回復か
フォルクスワーゲンの欧州における先行受注90万台のうち、現時点でEVが約8%を占めており、今年後半には9~10%に伸びると予想されている。 ブルーメCEOによると、2025年の目標達成のために、今年後半に一部のEVの販売を控える用意があるという。 特に年末にEV販売台数を増やすことが、プール戦略と並んで重要な戦略となるだろう。 フォルクスワーゲンは過去数年間、中国企業SAIC傘下のMGとプール戦略をとってきたが、EUが中国製EVに暫定関税を課したことで大きな打撃を受けた。MGの関税はほぼ50%に達しており、この暫定関税が11月に恒久化されるかどうかに注目が集まりそうだ。 しかし、ブルーメCEOが2025年目標を緩和すべきという今年初めの発言を繰り返さなかったことは注目に値する。同社が戦略に自信を深めていることがうかがえる。 一方、BMWは2025年を心配していない。オリバー・ジプセCEOは決算説明会で、「目標を達成するのは誰にとっても厳しいことだが、我々は2025年に向けた予備計画を実行に移しているところである。それは我々の目標達成を示している」と述べた。 しかしジプセCEOは、EUが2035年に設定したゼロ・エミッション目標に対する批判を繰り返した。ICE車の場合、同年以降はカーボンニュートラルなeフューエルで走行可能な新型車しか販売できなくなる。 今年はEVが消費者から拒否されたように見えるが、心配する必要はないとポリスカノヴァ氏は主張する。「欧州では、英国を除いて2024年にEVの販売は停滞するが、2025年には持ち直すだろうというのが我々の見方だ」 その理由の1つとして、ほぼすべての大衆車メーカーが2万5000ユーロ(約400万円)以下のEVモデルを計画していることを指摘した。消費者にEVへの乗り換えを促し、来年からの厳しいCO2排出量目標を達成する助けになると期待される。 「我々の見解では、規制に柔軟性を持たせる必要はないだろう」とポリスカノヴァ氏は言う。
ニック・ギブス(執筆) 林汰久也(翻訳)