嫌がらせ、ハラスメントに対し「笑顔でやり過ごす」とさらに攻撃を受ける。「心理的なゴミ箱役」にならないためには、冷静に対処が大切
厚生労働省が行った「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、企業に対する調査において、過去3年間でパワハラの相談件数は「変わっていない」という回答が最も多かったそう。様々な嫌がらせがあるなか、心理セラピストの大鶴和江さんは「既読スルー」「ネチネチとした嫌味」といった、遠回しでわかりづらい「ずるい攻撃」をする人の存在も指摘しています。そこで今回は、大鶴さんの著書『既読スルー、被害者ポジション、罪悪感で支配 「ずるい攻撃」をする人たち』から、その心理と対処法を一部ご紹介します。 【書影】深くて面白い「隠れた悪意と敵意」の心理学を読み解く一冊。大鶴和江著書『既読スルー、被害者ポジション、罪悪感で支配 「ずるい攻撃」をする人たち』 * * * * * * * ◆「笑顔、穏やかに過ごす」対処法が、関係を悪化させる 怒りを直接表現しない嫌がらせや、巧妙な意地悪や受動的な攻撃などは、わかりにくくて目には見えません。そのため攻撃を受けた側が指摘したり、非難したりすることは難しいものです。 そのような攻撃を受けたときにどうしたらいいのでしょうか。 その対処法として多くの人は次のように考えます。 「笑顔でやり過ごす」 「波風を立てずに、穏便に、平穏を保つこと」 しかしどうでしょう。 現代はパワハラ、モラハラをはじめ、最近ではモンスタークレイマー、カスタマーハラスメント、モンスターペアレンツ、モンスターペイシェントなど、新しい言葉が次々と生み出されています。 それくらい現代人はストレスの処理ができずに、未解決の自分の葛藤や怒りの矛先を関係のない他人に向けて発散してしまうのです。
◆「ずるい攻撃」の矛先 特に最近はこのようなハラスメントに対する対策や理解がなされているのに、一向になくなる気配はありません。 なぜなら、「やってはいけないことだ」と禁止されればされるほどにその怒りを抑圧してしまうから。 つまり自分の中の怒りやストレスを抑圧して、自分の中にはそのような感情はないという善人でいなければならなくなるのです。 「自分は善人であり正しい」という前提で生きようとすればするほど、心の中で起きる葛藤が大きくなり、自分の中に湧き上がる怒りやストレスはかえって大きくなって処理不能になってしまいます。 なぜなら人は不満や本音を抑え込めば込むほど、その欲求不満やストレスは肥大化してしまうからです。そうやって自分を誤魔化して抑圧すればするほど、溜まったストレスはちょっとした刺激で暴発することになってしまいます。 そして、このようなハラスメントを行う人々というのは、誰にでも迷惑行為や嫌がらせをするわけではありません。 その「ずるい攻撃」の矛先は、必ず自分より弱いものに向かいます。 なぜなら、絶対に反撃してこない立場の弱い人を、無意識に選んでやっているからです。 自分の妻や夫、子ども、親、パートナー、親しい友人、同僚や部下、タクシーの運転手、コンビニの店員、スーパーのレジ係、電話オペレーターなど、立場上弱い人に吐き出す傾向にあります。 その被害を受けた人は、相手に逆らって反論したり、対立したり、諭したりすればするほど、相手は激昂し、よりひどい暴言や威嚇行為などになる場合もあります。 そして、被害にあった人が心を病んでしまうようになります。
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