【3つの楽しみ方】伝説的デザイナーの半生を紐解く映画、ジャンポール・ゴルチエとは?
映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』が9月29日(金)より全国で公開される。 ヴィンテージはレッドカーペットの新たなスタイル? 2018年にパリで初演を迎え、今年、東京や大阪でも上演された「ファッション・フリーク・ショー」の舞台裏を描いたドキュメンタリーである。これは企画・脚本・演出をジャンポール・ゴルチエが手がけたミュージカルで、実は私は18年の10月、パリで観ている。 ゴルチエの最終的な落としどころは私にはちょっとトゥーマッチな部分もあり服は持っていないのだが、彼が衣装を手がけたリュック・ベッソン監督の映画『フィフス・エレメント』(1997)は公開当時、独自の世界観を作り上げる才能に圧倒され何度も観た。それに敬愛するマルタン・マルジェラはゴルチエのアシスタントを務めていたこともあり多大な影響を受けているから、私が好きなデザイン哲学からは遠くない。記事か何かで公演の案内を見かけて、ミュージカルもきらいではないし、パリコレ取材ついでに行ってみようかしらという気になったのだった。 が、会場となったフォリー・ベルジェールの内装にうっとりしつつワインを飲みながら開演を待ち、出演していたモデルのアンナ・クリーブランドの存在感と演技力に驚かされた記憶はあるものの、確かスケジュールが詰まっていたとかで途中で退席せざるを得なかったような……。幸運にも映画を先駆けて観る機会を得たのだが、ミュージカルの内容をぼんやりとしか覚えていないことに気づいたのだった……。 それはさておき、こちらの映画、ゴルチエの半生をベースとした内容の「ファッション・フリーク・ショー」について本人が語っているので、自伝的なドキュメンタリーと言っていい。そこでこのたびは、映画で描かれている彼のこれまでの人生で個人的に気になった3つのポイントをご紹介したい。 まず最初は、ゴルチエとファッション業界との関係について。 彼は2015年に自身のブランドのプレタポルテを終了し、20年春夏オートクチュールで引退。以降オートクチュールはゲストデザイナーを迎えて発表している。ちなみに私は14年からパリコレを取材しているものの、一度も彼のショーを観たことはない。聞いた話では、1980~90年代はなかなかチケットを手に入れることができなかったらしいが、プレタポルテ終了間際にそんな勢いはもはやなかったような。私はチケットのリクエストもしなかった気がする。 で、映画では、早々にファッション業界から距離を置いた彼の心境を聞くことができ、移り変わりの激しいこの業界で第一線であり続けることの難しさやもはや自分が中心にはいない、と気づいた時の哀しさを思い知らされる。次々と新しさを追い求めるのがファッションの醍醐味ではあるが、そこで生き抜くのはやはりシビアなのである。