学園ドラマはなぜ減った?「熱血教師のほうが人気が出るが… 」王道を外す、窪田正孝(36)の絶妙すぎた“役作り”《『宙わたる教室』最終回》
学園ドラマはなぜ減った?
窪田正孝演じる東新宿高校定時制に務める理科教師・藤竹叶と生徒たちによる、科学部での活動を通した成長を描く物語『宙わたる教室』から目が離せない。 【画像】生徒の顔を覗き込むときの笑顔がキュート…定時制高校教師を演じる窪田正孝(36)を見る まず、近年減ってしまった学園ドラマをやってくれてありがとう! 学級形成のためは大量に若い俳優を用意する必要があり、普通高校の1クラス40名程度の“大箱”となるとコスパが悪く、制作に二の足を踏むジャンルとなってしまった学園ドラマ。 そんななか、少人数制で生徒と教師が密につながる定時制高校を題材にするというのは、制作陣にとっても、目の肥えた視聴者にとっても良い結果だったと思います。 定時制には、そこにしかないドラマがたくさん存在します。本作は、数話をかけて問題を抱える生徒たちの背景を丁寧に描くところから始まります。まずはストーリーの起点となる柳田岳人(小林虎之介)。読み書きが苦手なことを馬鹿にされ、中学から不登校になり、不良の道へ。負のスパイラルから抜け出すため20歳で定時制高校に通い始めます。ある時、藤竹の指摘をきっかけに、自分が発達性ディスレクシア(読み書き障害)だと知ることに。 思考力も暗記力も計算力もあるのに、文字を認識する機能の問題のせいで、学校のテストで低い点しかとれず、「学力不振」に悩み続ける人たちがいる。その事実を多くの視聴者が知るきっかけにもなったことでしょう。 藤竹は岳人の数学の答案から、成果が出ないのは何か合理的な理由があるのではないかと推理。これはまさに研究者の態度です。小さな違和感をないがしろにせず、生徒の抱える課題を見逃さない姿勢はすばらしすぎます。
学園ドラマの「王道パターン」当てはまる部分、外した部分
ほかに、母親がフィリピン人で不法滞在だったため、子供時代に学校へ通えなかった40代の越川アンジェラ(ガウ)。起立時にめまいなどが起こる起立性調節障害であるため、保健室登校を続けている名取佳純(伊東蒼)。最年長は生家が貧しかったことから中学を出てすぐ集団就職した70代の元町工場経営者・長嶺省造(イッセー尾形)。彼らが抱える背景についても1話ずつ触れていきます。 藤竹のすすめで4人は科学部のメンバーとなり、火星の再現実験を行うことに。構成としては、生徒の問題を教師が解決しながら仲良くなり、仲間が一人ずつ増えていくという学園ドラマの王道パターン。でも、それだけではありません。本作を観ていると、ほかの学園ドラマと違う感動ポイントに出くわすことになります。それは「学ぶ」ことの大切さを伝える意思が根底にしっかりあること。 学園ドラマは友情や恋愛、生徒が抱える問題などが焦点になりがちですが、本来、学校を舞台に伝える作品で一番大事なことは、「学び」の面白さに気づかせる点だと思うのです。 高校は社会で生きていくために必要となる能力を共通して身に付けることのできる教育機関。でも、さまざまな事情で進学が叶わなかった人たちがいる。そんな人たちが、学びたいと思って再び学校という場所に集っている。社会性とか協調性とか忍耐力とか、“ジャパニーズサラリーマン”に必要な素養を身につけるためではなく、“勉強したい”という意思で、生徒たちはここにいるんです。 情報化が進む今は、教えられたこと以上に、自ら学び、吸収できる人だけが生き残れる時代だと思います。だからこそ、この意欲が大事。学ぶ喜びに目覚めた生徒たちは、科学部を通して、新しい世界を見出す「好奇心」、物事の本質を見抜き、自ら考え抜く「思考力」、形あるものを生み出し、失敗しても結果を出す「実現力」を取得していきます。