学園ドラマはなぜ減った?「熱血教師のほうが人気が出るが… 」王道を外す、窪田正孝(36)の絶妙すぎた“役作り”《『宙わたる教室』最終回》
学園ドラマ=“教師のドラマ”である
学園ドラマは、たいてい教師の物語でもあります。その主人公は熱血であればあるほど視聴者を魅了するものですが、本作は熱血な先生が生徒を変えるような既存の学園ドラマではありません。藤竹先生は生徒を科学部に熱心に勧誘するのではなく、あくまで科学や実験という自分のテリトリーで生徒を導き、仲間に引き入れていくスタンスの優しいキャラクターです。 それは窪田正孝の徹底した役づくりの賜物でもあります。あえて熱っぽくない演じ方なのは、先生である前に研究者として生徒と接しているから。だからといってクールというわけでもなく、もちろん熱血でもない。わかりやすくないというのはむしろ一番難しい表現なわけですが、このバランス感が必要とされる演技を普通にこなす窪田正孝、すごすぎでは! 淡々としつつも生徒を置き去りにしない、寄り添いの接し方は、定時制のみならず、現在の教育現場の教員としても向いているように感じます。そんな藤竹も、5話では感情を爆発させます。科学部が「定時制高校が参加したという前例がないから」という理由で、コンテストの出場を拒否された際に、「そんなの理由にならない」と激高するのです。そしてかつての同僚・相澤努(中村蒼)と食事をするシーンでは、「前例がないってことは空気読めってことじゃないのか?」と言われ、悲しい表情を見せる。 この急な感情表現は、インパクト抜群でした。これまでの繊細な演技と振り切った演技を巧みに使い分け、それを違和感なくひとつの配役の中で共存させられるのは窪田正孝の強み。そしてその感情の発露が自分のことではなく、理不尽な仕打ちを受けた生徒を思って動いた感情であったことも、藤竹の人となりを伝えるには十分でした。普段の表情が乏しくても、心の中では熱い炎をたぎらせているのです。これはもう、好きになるしかない……! 最高の教師すぎます。 今回の役について窪田は、「土スタ」出演の際に、「人の感情って台本に沿ってないから、僕は外してノッキングが起きることが当たり前だと思っている。むしろそれを大事にしている」と述べていました。今回の役に対しても、台本以上に自分の役に対する姿勢を大事にし、現場ですり合わせながら藤竹像を創り上げたようです。 物語の後半は科学部の生徒のみならず、藤竹の物語としても動いていきます。惑星科学の研究者としての将来も有望視されていた藤竹が突如定時制高校の教師になることを決意した理由も、学生を理不尽に扱う社会への抵抗からでした。