ネット広告の闇を探る! 企業も無視できないSNS広告詐欺とMFAサイトの実態
悪質なデジタル広告がもたらす被害
ではここからは、違反広告によって引き起こされている被害の実態について、立場ごとに解説していこう。 ■ 消費者の立場 消費者にとって、ネット広告は「被害の入り口」だと土橋氏は指摘する。投資詐欺の被害額は年間468.1億円(警視庁資料)、定期通販の苦情は年間8万5,000件程(国民生活センター ウェブサイト)存在するが、これらの主な入り口はネット広告であると考えられる。 定期通販の苦情としては、「初回1,000円」などの宣伝文句を見てお試しで購入したが、知らないうちに定期購入の契約になっており、解約に違約金が必要となるようなケースが代表的だ。 ┌────────── 消費者は、自分の生活を守るために「広告を脳内スルーせざるを得ない」状態になっています(土橋氏) └────────── ■ なりすましの被害者の立場 先ほど紹介した「著名人なりすまし広告」の場合であれば、その著名人はさまざまな被害を受ける。たとえば、なりすまし広告の詐欺被害者からクレームや脅迫が届いたり、ブランドの印象が悪化してブランド毀損が起きたりする可能性がある。しかしながら、こうした被害に対して広告プラットフォームが補償してくれることはない。 ■ 広告主の立場 広告主の立場としては、広告単価が入札で決まる以上、違反広告の存在によって「単価の高騰」という被害を受ける。しかし、広告主が健全化の圧力をかけているという話はあまり聞かない。その点について土橋氏は次のように指摘する。 ┌────────── 広告主は違反広告に対して「ふざけるな」と言う権利があるはずです。しかしそれを言っていないのは、自社の広告の適法性についても自信がない、だから目立たないように黙っていようという考えなのかもしれません(土橋氏) └────────── より間接的な影響としては、違反広告によってそのメディアの信頼性が揺らぎ、ユーザーの警戒心が高まることでクリック率やコンバージョン率が低下し、結果的にコンバージョン単価が上がっていくことも考えられる。 ■ 資本市場への影響 詐欺広告からも売上を得ているMetaだが、投資信託の「オルカン」でのMetaの組み入れ割合は1.3%程度に達している。つまり、年金積立金やNISAで投資する個人資産の一部がMetaに投資され、Metaからの配当金を受け取っている形になっている。 ┌────────── Metaの利益の一部は詐欺広告によって得られたものですが、その利益が巡り巡って自分たちにも入ってきているということです。すごく薄くではあるのですが、実は国民のほぼ全員が詐欺広告のエコノミクスのなかにいるわけです(明坂氏) └──────────