熟年離婚「真面目な人ほど危ない」 岡野あつこさん語る
同居していた期間が20年以上の夫婦が離婚する「熟年離婚」の比率が過去最高となっています。ほんのささいな一言がきっかけとなり、離婚まで突き進むケースも少なくない。「なぜ『妻の一言』はカチンとくるのか?」(講談社)を出版した離婚カウンセラーの岡野あつこさんに熟年離婚の傾向と対策を聞きました。 【写真】結婚21年目で迎えた破綻の危機 約4万件もの離婚相談を受けてきた公認心理師の岡野さんは、近年の熟年離婚の傾向をこう分析する。 「昔は夫の浮気や金銭トラブルなどに由来する相談が圧倒的に多かったのですが、最近はモラルハラスメント(以下はモラハラ)、価値観の相違などの相談が増えています」 岡野さんによると、熟年離婚はコロナ禍以降、リモートワークなどで長い時間、自宅で夫婦で過ごす場面が増え、顕著化したという。 ジュースのことが離婚話に発展したケースもある。夫が在宅勤務になり、15分に1度、キッチンにジュースを飲みに来て「会社を辞めたい」と言う。妻が「この先の人生を考えると耐えられない」などとLINEに書いたところ、夫に見られてしまい離婚話に発展したという。 かつて相談者の多くは女性だったが、最近は男性も増えた。ほとんどが浮気もしない、借金もしない、真面目な勤め人だという。 ■真面目な人ほどささいなことを許せない 「真面目な人ほど社会の倫理観に基づいて相手の行動にダメ出しや断罪しがちです。そしてささいなことが、許せなくなる。ため込んだ不満が爆発し、離婚というケースもある」と指摘する。 ドメスティックバイオレンスなど深刻な場合をのぞき、よくよく話を聞くと、どちらかが一方的に悪いというケースはあまりないという。夫のモラハラ発言は問題だが、妻の挑発的なひと言もよくないなど双方に反省すべき点があることも多い。 熟年夫婦は愛情うんぬんより、経済的な関係という側面があるため、離婚が経済的に損なのか、得なのかよく考えて判断する必要があるという。 「専業主婦の方が勢いで離婚するとあとで困窮し、後悔することにもなる。経済的な自立のメドをつけることが大事」
朝日新聞社